「奈美と結婚しても、ダウン症の弟くんの面倒を見る自信がない」
高校生の時、付き合っていた彼氏が言った。ショックだったのは。明るかった彼の、思いつめたような表情でも。とつぜん切り出された、将来の話でも。障害のある弟を、否定されたことでもなかった。
昔から、細かい数字を覚えるのが苦手だ。自分の身長、50m走のタイム、友人の誕生日、恋人の記念日、宿題の提出期限。
すべて覚えていた試しがない。そんな私が唯一、細かく覚えている数字がある。
2005年6月9日18時42分。父が亡くなった時間だ。
「これ、転がしたらええんちゃうかな」
目の前に鎮座する、四角い一人がけソファをじっと見つめていた母が、ぽつりと言った。
こんなバカみたいに重いものをどうやって、100メートルは離れたゴミ捨て場へ持っていこうかと、私は頭を抱えていたところだった。マンション中の住民が寝静まる深夜3時。私と弟は全力でソファを転がし、前へ進んだ。
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昨日、AbemaTVの生放送ニュース番組「けやきヒルズ」に出演した。てっきり「ごきげんよう」のコロゾーポジションで呼ばれたのかと思ってたら、授かりし役割はコメンテーター。
コ、コメンテーター!?
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藪から棒に申し訳ないが。(高校生の頃まで、藪から棒とはぶっきらぼうの相方だと思っていた)ちょっと、思い出してみて。「天空の城ラピュタ」の冒頭で、パズーがラッパを吹いている。名シーンだ。パパーパパパーパパーパパーパー♪というメロディとともに、バサバサと飛び去っていく大量の鳩を。
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28歳にして、はじめてハワイへ降り立った。数年前仕事でハワイに行ったと言う(言ってみてーわ)母が「ハワイはいい」「ハワイはいいぞ」「ハワイの空気を吸うだけで元気になる」「私の前世は、ハワイの原住民だったはず」というような供述を繰り返すので、ノイローゼになる前に、2年かけてキッチリお金を貯めて、やってきた。
Read Moreかつて「魚の絵を描け」と言われて、横からではなく、正面から見た魚を描いた子どもがいた。私の父だ。
Read More2019年12月。
都会の震えるような寒さに耐えられず、温かい場所へ行きたくなった。
母に「寒さが限界です」と、LINEを送る。
ポンッという音がして、母から返事がきた。
2011年。
母の長い入院生活が、ようやく終わろうとしていた夏。
とある大手旅行代理店へ、私はおそるおそる足を踏み入れた。
風が吹けば、どうなるか。桶屋が儲かる。ご存知の通り、桶屋が儲かるのである。
Read Moreなんかもう、ここんとこ岸田家、盆と正月が一緒に来たような大騒ぎ。実家に帰ったら、父の仏壇にいつも供えられてる、ぼんち株式会社のぼんちあげ(155円)が、播磨屋本店の朝日あげ(500円)になってた。
Read More2016年11月。土埃と魚醤の匂いがするミャンマーの市場で。私は立ち尽くしていた。
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