第2話 前澤友作物語できへんやないかい
スタートトゥデイ・前澤友作さんと定期的に会うことになった、私ですらろくに把握できていない、経緯はこちらの過去記事を。
前澤友作さんと言えば。
お年玉企画と、お見合い企画で、早々に私の2020年なんでやねん大賞を受賞する勢い。
そういえば、初めてお会いした時、Tさん(前澤さんの広報担当)が言ってた。
「内容は言えないけど、また色々、大変なことが始まる予定なの……」
本当に色々大変なことが始まってるので、マジTさん大変だなと思った。
ということで、話は1ヶ月以上、さかのぼりますが。
前澤さんと初めて会った一週間後、私はまた、会うことになった。
赤坂にあるオフィスに、のこのこと足を運んだ。
Tさんに指定されたフロアに行くと、6畳ほどの待合室らしきスペースがあった。
スペースの奥に、オフィスへ繋がるであろう扉。
フロア全体が静まり返っていて、約束の時間になっても、
私以外の人の姿は見当たらない。
これはもしかして、自分で受付をしないといけないのかな。
でも、なあ。
受付らしきものが、なーんにも、見当たらないんだよなあ……。
暗い照明にぼやっと浮かび上がっているスペースは、めちゃくちゃ洗練されていて、シンプルでオシャレ。
都会のスタイリッシュなホテルか。
来た瞬間に「あ、前澤さんっぽい」と直感的に思った。
でも、人はおろか、電話やタッチパネルも見当たらない。
奥の扉も、開く気配が、ない。
これは、あれか?
脱出ゲームか……?
アイテム……アイテムはどこ……?
しばらくして、扉が開き、Tさんが申し訳無さそうに
「ごめん、ごめんね!気づかなかった」と迎えに来てくれた。(アイテムは無かった)
ちなみに、受付用の小さな電話は一応、あった。
オシャレすぎて気づかなかった。
無念。
会議室へ通されると、前澤さんがいた。
「この間のエッセイ、読んだよ。おもしろかった!」
「えっ、あっ、恐縮です」
グフフ、とか、デヘヘ、とか、変な笑いが漏れた。
下座だとかキャバクラみたいとか、さんざん書いてしまったので、
正直、ビビっていた。
でも、前澤さんは喜んでくれていた。
「ところで、前澤さんも普通にエレベーター乗るんですか?」
Tさんが笑った。
今それ聞く?って感じで。
気になったんだもん!
「乗るよ。なんで?」
「いや、なんか、専用のエレベーターとか、屋上にヘリで降りるとか」
「無い、無い!(笑)」
「でもこのビル、他の会社もいっぱい入ってるから、普通に他の人と会っちゃいますよね?騒ぎにならないんですか?」
「ならないよ……」
「みんな、前澤さんって気づかないんでしょうか」
「気づいてるけど、なにも言われない。東京の人はそんなもんだよ」
なるほど、東京の人はすごい。
神戸市北区の山奥にある私の地元に前澤さんが来たら、秒で囲む自信がある。
「これ持ってって!」とかさばる炭酸煎餅や二郎の苺を押し付ける自信がある。
実際、前のnoteを公開した時、「前澤さんどうだった!?」と真っ先にこぞって連絡を送ってくれたのは、地元の人たちだった。
神戸市北区民よ、そういうとこだぞ。嬉しいけど。
さて。
今日、お会いした目的は、私が何を書くのか、だ。
私が「やってもいいよ」と言われたことは、
前澤さんに会った現在のエッセイを書くことと、
前澤さんが歩んできた過去の小説を書くこと。
小説は、前澤さんが主人公の「前澤友作物語」になるのだと思う。
多分。
じゃあその小説をどうやって書くのか、を私たちは話し始めた。
「前澤さんは完璧主義だから、これまで本は出版直前にお蔵入りしてきたんですよね」
「うん」
「WEBメディアで長編のインタビューが公開されてるのは、なんでですか?」
前澤さんの幼少期から、ZOZOを創業し、宇宙ビジネスを目指すまでのストーリーを取材した連載記事がある。
ここに来るまで、私は前澤さんに関する色んな記事を読んで予習したが、
それが一番、前澤さんについて詳しく書かれている記事だと思った。
「あれはね。ライターさんが書いてくれた記事に、俺がめちゃくちゃ書き足した。ほぼ全部書いた回もある」
「おー、前澤さんが……」
「スマホで」
「スマホで!?」
全部で47,000字くらいある、毎日更新の記事を、スマホで!?
「俺、パソコン使わないもん」
「それどころか、友作くんはメールも見ないからね。仕事もプライベートも連絡は全部LINEだし」
Tさんが言った。
私は、スマホでそんな長文は書けない。
どんな目と指してんねん、と思った。
でも、LINEだから、判断も指示も速いんだろうな〜〜〜。
メールだったら、いちいち「お世話になります、岸田奈美です。ご無沙汰しておりますが……」とか長々書いちゃうしな〜〜〜。
しかし、困った。
前澤さんのことを一番わかってるのは、前澤さんだ。
完璧主義の前澤さんの考えを、完全に再現し、納得してもらう作品を私が書けるんだろうか。
私は、悩み始めた。
前澤さんは、私が想像していたより、口数が少ない人だった。
私はよくお茶の間で報道されている前澤さんを見ていて、めっちゃペラペラ喋り倒す人だと勝手に誤解していた。
いや、めっちゃ喋っては、くれるのよ?
でも、なんだろう。
派手なカリスマ経営者ってさ。
たとえば「この事業を始めた経緯ってなんですか?」って聞かれたら。
「あれはね、モチベーションとコミットメントが低いのにエンゲージメントだけが高いから、ポジティブにグロースしたかったんだよね。この間、社長仲間の◯◯さんと飲んでた時にも話してたんだけど〜」
つって、専門用語もりもりで、聞いていないことまでガーッと広げて話すような、知らん人と知らん仕事の話を知らん言葉で話してるような、そんなイメージが私にはあった。(どんなイメージ)
あとから記事にする時に、どの情報から削ろっかな、と頭を抱えるような。
前澤さんは、真逆だ。
「世界平和のためになるから」
とか
「それは面白くないじゃん。だからやらないよ」
とかいう具合に、迷いなく、淀みなく、そして穏やかに、簡潔な言葉を返してくれる。
「それ以外の答えがあるの?」と言わんばかりの。
真理……?
これは真理……?
そんな感じがする。
だけど真理すぎて、凡人の私のポッコリふくらんだお腹には、落ちない話がかなり多い。腹落ちしない。
ていうかこれ読んでる人の中にいる?
前澤さんが言ってること、120%迷いなく全て理解アンド共感できる人。
ぶっちゃけ、私はわっかんねえの!!!!!!!
いや、言ってることはわかるし、
世界平和はわかるけど。
なんか。
そこにたどり着くまでの、細かい話とか、心情の変化とか。
共感はするけど、モヤモヤが残るっていうか。
ざっくりはわかるけど、細かいとこわかんない!なんで100万円配った!!??!?!?とか思わない?
……あれ?
もしや、そういう理屈を求めようとしてる私が雑念だらけ?
修行が足りない?
そういう感覚になることが、あった。
「私、前澤さんが思ってることを小説に100%反映できる自信がないです……」
「俺もそう思う(笑)」
いや、思ってるんか〜〜〜〜〜〜い!!
小説、できへんやないか〜〜〜〜い!!
その時、私に、ひとつのアイデアが舞い降りた。
→続きは来週公開予定!