18歳の悩みにアフロと岸田が答えた結果、ちっちゃく転職してることがわかりました

 

2025年3月18日「CHOOSE YOUR LIFEFES 18歳の成人式」のトークイベントに出演させてもらいました。

ものすごい人数の18歳たちをお祝いしつつ、質問に答えるというのを、わたしと、ラッパーのアフロさんと、ラランドのニシダさんでやりました。

時間内にすべて答えきれなかったので、楽屋に戻ってから、答えることにしましたので、ここで公開します。

ニシダさんは「日本一のクズを決める大会で戦うという仕事があるので」と飛び出して行かれましたので欠席です。

▼音声で聞きたい人はPodcast版をどうぞ

目次

  1. Q.夢を追うか、安定した職業に就くか悩んでいます。いまの道を選んだ時に、不安はなかったですか?

  2. Q.今までは高校生だから許されていたことも、これからは自己責任として問われますよね。もし失敗したり、選択を間違えたりしても、今までのようにフォローしてもらえず、自分で責任を受け止めなければならないのが怖いです。

  3. Q.SNSでいろんな才能を見ると、自分には何ができるのかわからず、自信を失ってしまいます。どうしたら、抜け出せますか?

  4. Q.めっちゃタイプな人がいて、友達として話すことはできるのに、何も行動できません。恋愛でアタックする勇気がほしいです。

Q.夢を追うか、安定した職業に就くか悩んでいます。いまの道を選んだ時に、不安はなかったですか?


岸田
「ありましたよ。ベンチャー企業に入ったときも、作家になったときも。なんなら今も、漠然とした不安はあります。

でも不安って、対象がよくわかってない時にだけ、感じるもんなんですよ。

たとえば、暗い夜の森にいると、なんか出てきそうだなって思うのが不安。なにが出てくんのかわかんないから、どうしたらいいかもわかんない。ずっと不安で眠れず、イライラしたりオロオロしたりしとかなきゃいけない。

ところがどっこい、対象がわかると、不安って恐怖に変わるんです。

どうやら崖があるらしいってわかってたら、朝までテントを張って混てばいい。この辺にはクマがいるらしいってわかってたら、クマを避けることだけ考えたらいい。恐怖には、手を打つことができる。

わたしは会社員を辞めて、作家だけやろうっていう時に、お金の不安があったので、まず、恐怖に変えました。家族で暮らすとして、生活費がいくらでで、映画と漫画はこれぐらい観られたら嬉しくて……と積んでいくと、仮に最低で15万円。15万円という恐怖に立ち向かおうって認めると、意外となんとかなりそうだって思える。母と弟にも少しの間なら食べさせてもらえるし、15万円を切ったら、また仕事を探せばいいや、とかね」

アフロ
「なるほどね。不安を恐怖に変えた瞬間、戦略が始まるわけだ。ちょっと言い換えるだけだ。つまり、悩むよりも、考えるほうがいいよっていうことだ」

岸田
「そう、そう!考えてどうにかできることと、どうにもできないことがあるので、まずどうにかなることからやっていくことにしました」

アフロ
「おれが音楽の道に進むって決めるタイミングはね、家族にひびが入った時だったの。家族なんて永遠に続くもんだと思ってたのに。その家族が割れちゃうってことは、もう、人生なんてどうなるかわかんねえんだって、気づいた。じゃあ、もう、なんか、慎重に生きてっても、無駄じゃんって。

あとね、夢を追ってる最中の幸福度数ってあるんだよ。好きなことをやってる時のしんどさには、酔っぱらえるっていうのはデカいよ。逆に、仕事をやらされてる時のしんどさには、酔えないんだよね。がんばれない。

おれはミュージシャンの前はサラリーマンで、ピンポン営業やってた。つらかったんだけど、営業は目標があるから、がんばれた。でも目標を達成しちゃうと、がんばれなくなっちゃった。それで、おれはやっぱり、やりたいことじゃないとがんばれない人間だなって思った。

ぜんぜん好きじゃない仕事なのに、めっちゃ褒められた瞬間、やりがいがわいてくる人もいるから、わかんないけどね。夢を追うのも、安定してみるのも、両方やってみたらいいよ

岸田
「安定した職業に就きながら、夢を追ってみることもできる」

アフロ
「岸田さんは、会社員を続けてて、来るべきときにペンを取ったってことだからね。でもミュージシャンは、音楽業界の都合はあって、若い人向けのビジネスのことが多いから……それは業界の弱さでもあるんだけど……早くやらなくちゃいけない。夢の種類によっては、いますぐに決断しないといけない可能性もあるよ。

これさ、ステージにいると、ビシーッとした答えをひとつ言わなきゃいけない気分になるけど、本当はこれぐらい結論がないほうがいいよね(笑)」


Q.今までは高校生だから許されていたことも、これからは自己責任として問われますよね。もし失敗したり、選択を間違えたりしても、今までのようにフォローしてもらえず、自分で責任を受け止めなければならないのが怖いです。


岸田
「立派な子じゃないか?」

アフロ
「立派な子だよ」

岸田
「すぐそばに、かっこいい大人がいたから、こういう質問を出せるんだろうな」

アフロ
「背中で語るタイプの大人がね」

岸田
「わたしは今でもねえ!大人だから自己責任で生きていかなくちゃなんてねえ!思ってないですよ!かじりまくっていくぜ、むき出しの他人のスネをよ!」

アフロ
「そういう、もっとダサい大人に会って、はやく安心してほしい」

岸田
「社会人になったら責任が増えるとはいうけどさ、新卒なんて、しょせん、新卒なんですよ。その上の課長は『新卒の面倒見てあげないと』って思ってるし、その上の部長は『課長の面倒見てあげないと』って思ってるよ。

大人になっても、慣れないことなんて絶対に失敗するし、フォローしてくれる人もいる。ひとりの失敗で社会が消し飛ばないように、みんなで回していくのが前提なんだよ。誰かに助けられたら、あなたも誰かを助けてあげたらいい。

その代わり、助けてって言わないと、助けがいるってわかってもらえないからさ。自分のせいって責めすぎると、助けを求められなくて、大変なことになるのはわかってほしい。

ニシダさんが『ぼくはいつも助けてもらえる場所にいる』って言ってたけど、本当にすばらしいことですよ」

アフロ
「自己責任には、めっちゃ素敵で、前向きな意味もあると思う。どんな未知も、自分で選んだって自覚を持って進めば、それは正解なんだよ。誰かに流されて選んだ道って、やっぱりどうしても、後ろ髪引かれるから。

自分で選んだ道を歩くぞって腹づもりが決まってるのは、怖いことじゃなくて、すごくいいことだと思う。

でも、ちょっと、真逆のことも言っちゃうけど。役者の仕事をもらったとき、俺はずっと、演技がへたで映画がダメになってもも、おれのせいじゃないって思いながらやってた。もちろん、一生懸命やるんだけどね。おれは役者じゃなくて、ミュージシャンだから。監督がおれを見て、アフロならいい映画になるってオファーをかけてくれたから、じゃあ、映画の出来の良し悪しはおれのせいじゃない。おれはただ、一生懸命やるだけだって、開き直りがうまくいった(笑)

一生懸命やるために、無責任でいようって決心したのがよかった。

自分の責任だって思ったほうががんばれるなら、そうした方がいいし、逃げ場や無責任さがあったほうががんばれるなら、それでもいい。一生懸命やれる方はどっちかを、おれは考えてるかも


Q.SNSでいろんな才能を見ると、自分には何ができるのかわからず、自信を失ってしまいます。どうしたら、抜け出せますか?


アフロ
「才能っていう言葉を正しく理解してないうちは、使わないほうがいい。芸人も作家もアーティストも、まだ言語化もされてないような細かい才能がギュッと束になって、できている仕事なんだよね。

で、みんな、そのシゴトの中でも、ちっちゃく転職してる。

芸人さんは、劇場でネタやるのから始まって、バラエティでひな壇にも座って、司会もやるじゃん。芸人っていう仕事の中で、ちっちゃく転職してんのよ。

おれもラッパーとして、最初は野心を歌ってたけど、だんだん家族のことも歌うようになって、と思いきや文章も書くようになって。同じ仕事をやり続けてるように見える人も、転職を続けてるんだよね。この仕事に必要な才能はこれだ、なんて到底言えない。

だからまず興味があるものをやってよくて。その先で、自分が思い描いてた才能は手に入らないかもしれないけど、思いもしない細かい才能で輝けるってことは、めっちゃある」

岸田
「あの、わたしからちょっと言わせていただくと、SNSでいろんな才能を見ると……って言ってるけども、SNSで人間の本音など見えません。本音のように見えても、9.99999割は嘘です。

だって、1万人とかに読まれる場所で書くんだよ。ありのままに本音を書いたつもりでも、それは、1万人の目を気にした本音だもん。無意識で、絶対に言い方が変わる。うちらも、舞台で話すことと、楽屋で話すことは、どっちも真剣なのに違うじゃないですか。

SNSを見て、うらやましいな、みじめだなって思うとしたら、そんな必要はまったくなくて、あなたは誰かが一生懸命取り繕っている何かだったり、雑音がいっぱい混じった何かを、見ているだけかもしれない。そんなもんに自信を失わされるのは、もったいないです」


Q.めっちゃタイプな人がいて、友達として話すことはできるのに、何も行動できません。恋愛でアタックする勇気がほしいです。


岸田
「なぜみんな、恋愛ですぐ攻撃をしようとするんだ。怖いだろ。人間が正面からアタックしてきたら。

デートに誘うとか、攻めていく方法をみんな考えがちだけど、これだけは言わせてもらう。誘う前からもう、始まっている。行くか行かないかなんて、誘う前からもう、決まってるからな。

つまりアタックって、扉を開けてもらうことだと思うんですよ。でも開けてもらうには、そのずっと前から、コンコンコンって扉を叩いて、ここにいるよ、あやしくないよ、よかったら開けてね、って知らせに行かなくちゃいけない。日常の安心感の積み重ねです。

で、なにがあれば一番安心してもらえるかというと、自信です。顔が好みじゃなくても、お金がなくても、なんか自信にあふれてる人って、安心できるんですよ。こいつ……なんか……あるのかもしれん……って、ダメなところすらも意味深に見えてくる。だから、自信のあるフィールドに日常から引きずり込んでいくのがいいと思います。

わたしは、メールでした。ちょっと笑ってもらえるメールを書くのだけは自信があった。こんなおもろいメール書くやつやったら、ちょっと遊んでやってもええかな、でデートにこぎつけたことが何度もあります」

アフロ
「恋愛の結果がどうなるかって、まあ、人間性とか見た目とかいろいろあると思うんだけど、それって結果の半分でしかなくて、残りの半分はもうタイミングでしかない。運だと思うんだよね。

だから、失敗しても、傷つきすぎなくていい。恋愛で自分の価値が判断されると思わなくていい。一世一代の決意なんかせずに連発したほうが、本当はいいんじゃないかな。

あと……やっぱ、水野敬也(※)最強説はあるよね

※水野敬也
『夢をかなえるゾウ』『LOVE理論』などを書いた、平成から続く自己啓発界の王。アフロと岸田のよき友人。

岸田
「あれね。恋人をつくるときは、5人に同時並行でアタックしろという……水野敬也の奇策……」

アフロ
「そうそう。ひとりに断られても、あと4人いるからまあいいやって余裕が生まれるという」

岸田
「すごいよな」

アフロ
「まあ、人じゃなくてもいいと思うけど。恋愛のほかに4個、仕事と、家族と、趣味と……みたいな。

最後に言いたいのは、勇気って出るもんじゃないよね。勇気って、使ったあとに確認できるだけ。勝手に湧き出てくることはない」

Podcastで公開されている内容をもとに、岸田奈美が文章で読みやすいように編集しました。言い回しや順番などが異なりますが、ご了承ください。


 
コルク