【キナリ★マガジン更新】嫁入りビンゴ士、地蔵盆にて初登板
京都には『地蔵盆』という行事がある。
8月末になると、お地蔵さんのまわりに、提灯やおそなえ物をならべてお祀りするのだ。
お地蔵さんは子どもを守ってくれる仏さんなので、地蔵盆はおやつを配ったり、集まってゲームをしたり、子どもはお楽しみ炸裂の一日でもある。
お寺で泊まったり、ふすまに映画を投影したり、みたいなエンタメ全振りの村もあるそうだ。なんだその楽しそうな夜は。
地蔵盆。
僧侶のみずきくんと結婚するまで、わたしも知らなかった。
今から数年前、わたしが婚約した時、
「毎年、うちの地蔵盆は村のおっちゃんたちがやってるんやけど……ビンゴするねん……」
理解のある彼くんを越える最強格の存在、理解のある義母さんに言われて、わたしは飛び上がった。
「奈美ちゃん、ビンゴがそんなに大好きなんやったら、地蔵盆でやってみたら?」
「理解ありすぎて逆に怖い!」
わ、わたくしめが……
ビンゴを……!!??!?!?!?
大抜擢。
入籍はこのための伏線だったのか。
はやる胸をおさえ、二つ返事で快諾した。むしろ懇願した。ビンゴ大好き。日本一ビンゴを愛する拙者にやらせてください。
おっと、わきまえねばならない。
わたしは嫁入りしたばかりの身。
家では大黒柱だが、寺では新米嫁である。
右も左も、東本願寺と西本願寺も、まだあやふやなわたしが、いきなり寺のビンゴ士として君臨するのははばかられる。
「まずはお手伝いを……BA(ビンゴ・アシスタント)として、末席にてお手伝いをやらせてください!」
ふだんは夫の三歩前を高速阿波踊りしながらサザエさんのように笛を吹いて歩いているわたしも、ビンゴをやる時は三歩後ろをしずしずと歩くことにした。
だって、お寺の行事、わかんないから!
(※一応補足すると地蔵盆は村の行事で、会場が寺なのである)
マジで日本と伝統行事とことごとく縁のない人生だった。
素人が想像するに、夏の終わりにナマハゲのような格好でもして、
「ビンゴするど〜〜〜!南無阿弥陀仏〜〜〜〜!」
村の家庭を練り歩き、ギャン泣きする子ども指をむりやり掴んで、ビンゴカードの穴に開けさせて一年の健康を仏に願うような、そういう古き良き儀式があるのだろう。きっと。
なかった。
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