【キナリ★マガジン更新】どんな手を使っても、低予算ビンゴをブチ上げろ

 

夫のお寺の地蔵盆で、ビンゴ大会を仕切らせてもらえることになった。四年目の下積みを経て、ついに本丸出陣。

思い描いていた“理想”を、今、ここで!
ぶちまけるぜ!ビンゴ士・岸田奈美!

「おかげで今年は人も増えて、40人ぐらい来そうやわ」

村のえらいおじさんが教えてくれた。

わたしが手伝いはじめた時は30人ぐらいだったので、小学校に子どもが60人もいない村にしては、快挙の増加でなかろうか。

「それで、今年の予算は……?」

「5000円!」

据え置き?

人が増えても、お値段据え置き?

これが小さなお寺のつらいところ。賭博罪に抵触してでもビンゴカードを売りさばいていた、我が地元の気持ちがわかる。

ないもんは、しかたがない。
5,000円で40人に、でっけえ夢、見せちゃらあっ……!



以下、低予算でビンゴに挑む人間の記録です。

目次

  1. メルカリでアミューズメント景品を購入

  2. テレビの裏側でスターにすがりつく

  3. お盆参りついでに檀家さんにすがりつく

  4. ディスカウントショップで花束のような恋をする

  5. 奥の手は著者なので手前味噌ですが

  6. 千本引きで最後まで超!エキサイティング

いくら司会を工夫したところで、ビンゴの華はやはり景品。今までは、おじさんたちの選んだしょっぱい景品だった。

子どもたちが、血湧き肉躍るような、目玉商品を用意しなければ、話にならない。

ところがどっこい、予算はたった5,000円。

たとえば残念賞を37人分、100円に抑えたとしても3,700円。上位賞を3人に絞っても、総額1300円しかない。1000円台の大当たりなんてさみしすぎる。

そこで、わたしは知恵を絞った。


メルカリでアミューズメント景品を購入

とどのつまり、子ども向けの景品は、大きくて、見栄えがよくて、テンションがあがるものが好ましい。

この条件を満たす伝家の宝刀が、

アミューズメント景品

である。

ゲームセンターのUFOキャッチャーの中に入っている景品たちのこと。ガラスの向こうから射幸心を煽るため、箱ができるだけ大きく、ド派手に作られている。

しかし景品表示法という法律があるので、おおむね800円以下の低コストで作られているのがミソだ。

小さく弱い身体をなるべく大きく見せる、レッサーパンダの威嚇のような代物。それがアミューズメント景品なのだ!

かつて法律にビンゴを奪われたわたしが、今は法律にビンゴを救われている。やはり法律は人民を守るためにある。

フリマアプリ『メルカリ』で、『アミューズメント 景品 未使用』と検索し、通知も設定して、一ヶ月ぐらい小まめに見ていれば、

ほれ、この通り!

新品未使用の「マリオカート リモートコントロールカー」と「ちいかわ ステンレスボトル&マグセット」をあわせて1200円で、「おぱんちゅうさぎ BIGぬいぐるみ」を500円で買った。

世の中には手グセでUFOキャッチャーを操り、欲しくもない景品を獲るという快感だけに全振りしているヒソカみたいな人間がいるので、投げ売りされる。

アミューズメント景品以外に『一番くじ 景品』もよかった。コンビニに置いてあるアレである。

あれの下位賞はダブついている人が多いので『すみっコぐらし』のレター&シールセットを格安でまとめ買いした。レターとシールは女児の財宝。



テレビの裏側でスターにすがりつく


田舎の農村では、未だに信頼すべき情報源が、テレビ>>>>>>>ラジオ>>>>>インターネットだ。

noteでエッセイを書いて生活しているわたしなどは、村の人間から見れば詐欺師または喪黒福造とほぼ同列なのだが、そんなわたしが人権をギリ得られているのはABCテレビ『newsおかえり』にレギュラー出演している恩恵に他ならぬ。

田舎の農村では『newsおかえり』の視聴率が120%を超えているのだ。テレビに出ているやつは、東京大学を出たやつよりもすごい。

ということは、メインアナウンサー・横山太一氏の人気もすごい。

声がでかくて元気でよく食べる男は、地元の甲子園球児と同じ熱量で自愛の眼差しを向けられている。農家は隙あらば口に米をねじ込んでやりたいと思っている。

「横山さあん、かくかくしかじかで、村のビンゴに困っててえ……(色紙を差し出しながら)」

「いいっすよ、いいっすよ」

「どうぞー!」

話が早い。早すぎて何が起こったのかわからなかった。

小雨のように道頓堀へ人が飛び込むことが日常茶飯事の関西において、これぐらいの速さで情報を処理し続けなければ、ワイドショーの顔は務まらないのか。あっぱれ。

村のアイドル、横山太一氏のサイン色紙をいただいた。

プロデューサーが憐れんで提供してくれた、エビシー(動きが日本一かわいい)のぬいぐるみも入れたら、

なんという貴重な一品でしょう!

この恩、村の視聴率で返します。







お盆参りついでに檀家さんにすがりつく

地蔵盆の前には、お盆参りがある。お寺にとっては、一年で一番アツい季節。わたしも夫にくっついて、お参りにうかがわせてもらった。

おしゃべり好きな檀家さんが多く、なんか、親戚でもないと聞けんようなヌメッとした話もたくさん聞けて、リアル向田邦子脚本でおもしろいんだけど、

「実はいま、ハンドメイドでアクセサリー作ってて……」

という逸材が見つかった。

てんさんは、元々お寺の隣に住んでいたけど、結婚して隣県に引っ越された人だ。地蔵盆の野望を話したら「地蔵盆って懐かしいですね……!夏の終わりでちょっと寂しくなってる子どもたちに喜んでもらいたいです!」と、協力してくださった。ほぼ材料費だけで、天然石のアクセサリーと消しゴムはんこをこしらえてくれるなんて。

しかも当日は旦那さんと息子さんを連れて、お手伝いにまで来てくだることになった。仲間の増え方、ドラクエみたいな展開。

ありがたや……ありがたや……。

世界はビンゴで困ってる人に優しい。

みんな、いいか?
ビンゴは総力戦だ!
全員野球だ!!!!!!!!!

人望という名の出世払いがどんどんかさんでいく。将来的にわたしが紫綬褒章もらって村で凱旋パレードでもしなければ、割に合わなくなってきた。


ディスカウントショップで花束のような恋をする


上位賞は豪華な顔ぶれになってきたので、あとは下位賞だ。

1人あたりの予算は80円〜100円代で、苦しすぎる財政難だが、ここであからさまに安い雑魚景品をそろえては士気が下がる。

そこで、ディスカウントショップに向かった。

ご存知でしょう?


▼記事の続きはこちら

https://note.kishidanami.com/n/n64df546dd6a4

▼キナリ★マガジンとは
noteの有料定期購読マガジン「キナリ★マガジン」をはじめました。月額1000円で岸田奈美の描き下ろし限定エッセイを、月3本読むことができます。大部分は無料ですが、なんてことないおまけ文章はマガジン限定で読めます。

▼購読はこちら
https://note.kishidanami.com/m/m5c61a994f37f

 
コルク