【キナリ★マガジン更新】これは稼業ではなく家業(エッセイの書かされ方)

 

「家族のことをエッセイにするのは怖くないのか?」と、心配されることがある。

実名、顔出しで家族のことを書くというのは、業である。書かずに済むんなら、たぶん、書かんほうがええんちゃうかと思う。もめるし。

ーーお前どの口が言うねんと!

そんなわたしは、家族のことを書かねば、生きのびられなかった家族の女!

ただ、業という自転車操業をコギコギしているわたしなりに、決めていることがある。それは「家族がなにを書かれたらイヤだと思うか?」を問い続けることだ。

わたしがめちゃ応援してる、ヘラルボニーという会社がある。

障害のある作家のアートを世界に発信しているブランドだ。服、ホテル、コスメ、メガネ……もはやコラボレーションしていないものを探すほうが難しい。キティちゃんかヘラルボニーかみたいなとこある。

こんなにもたくさんのコラボレーションがあるということは、たくさんの契約書もあるわけで。それは毎回、作家のもとまで社員が馳せ参じて、説明して「アートを使っていいよ」と納得してもらうという。

……と、こないだポロッと聞いて、びっくりした。

だって最初からアートを買い取って、何に使うかは会社が自由に決めたほうが、どう考えても楽だし。でもそうしないんだって。

「知的障害のある作家さんだと、説明するのもむずかしくないですか?」

聞いたらば、ご家族や介助者さんにももちろん協力してもらうこともあるが、作家の気持ちをかならず確認するらしい。

イメージしやすい写真を作ってお見せしたり、わかりやすい表現にしたり、一度ではなく何度も会って「いいよ」と通じあえる瞬間を探すそうだ。その時間を待ってくれる会社とだけ取引する。

社長の松田崇弥さんと文登さんと話してると、事あるごとに、

「経営でも生活でも、兄がされてイヤだと思うことはしない」

と、ふたりが言う。めちゃくちゃいい約束だと思った。

なんというか、覚悟がある。

兄の翔太さんには自閉症がある。翔太さんがイヤだと思っても、言葉で伝えてもらうのはむずかしい。イヤだという拒絶のヒントを、探り続けなければいけない。

翔太さんがどんな表情で、どんな仕草で、なにを幸せだと思うのか。それは何年もかけてじっくり向き合わなければいけないし、いっそ、ぶつかってみて初めてわかることでもある。

ふたりの約束には、

「兄をわかろうとする努力をしつづけるし、もし間違えてしまったとしても、その責任を引き受けつづける」

の覚悟があると思った。

そして、わたしが家族のことを書き続けていられるのも、似たような約束のおかげだ。

家族のことを書いて、ひどく失敗したことがある。


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