【キナリ★マガジン更新】背水の陣を温泉にして(エッセイの書かされ方)

 

米津玄師さんがインタビューで「ヘルシーでいるために」という言葉をたくさん使っていた。首がもげるほどうなずいた。ってかもう、もげてもいいと思った。同じ1991年に米津玄師という星が生まれてくれた。それだけでわりと、もげていける。 

ヘルシーというのは緑黄色野菜を摂るとかの話ではない。自分が大切にしている心を、なにがなんでも守り続けるということ。例えば、インターネットで悲しみや怒りばかりを増幅させないようにするとか。

それだ!
それなんだよ、本当に!


 声を大にして言いたい。わたしがいちばん大切にしたいのも、このヘルシーさだ。妖怪・首モゲラになっている場合ではない、語らねばならぬ。

 わたしのヘルシー★作家生活は“やめること”から始まった。

書くことを仕事にしたいと思った日、編集の佐渡島さんに相談した。

「売れ続けることより、書き続けることを一番に考えましょう」

 意外な答えが返ってきた。

「えっ、売れなくていいんですか!?」 

「続けることのほうがずっと難しいんです。10年後も書き続けられる人はあんまりいません。だから、続けるためのストレスになることを、なるべく減らすのが大切なんですよ」

「へえー……」

拍子抜けだっが、正直、ホッとした。

作家は朝から晩まで机にかじりつき、ヒットを出すまで徹夜も辞さぬべし……みたいな、極限生活ではなかったのだ。 

ところが、その後、わたしは思い知った。

続けるためには、やることよりも、やめることのほうがずっと多かった。がんばることよりも、がんばらないことのほうがずっと大変だった。

  

まず、泣く泣くやめたことは、寄稿だった。

最初の頃は、いろんな媒体から依頼されてエッセイを書いていた。2019年頃はWEBメディアが今よりたくさんあり、出版社以外の会社もこぞって“お金”や“ごはん”などのテーマでメディアを立ち上げるブームだった。

3000文字ぐらいのエッセイなら3万円が相場で、月に5本書けば生活できる。でも、ちょっと続けてみたところ、すぐに疲れてしまった。

書くことはしんどくなかった。
しんどかったのは、消えることだ。

WEBメディアは数年で閉鎖することもめずらしくなかった。すると、わたしのエッセイも消滅した。人生の一瞬を切り取った大切なエッセイ。もう二度と同じことは書けないってのに、あっけなくインターネット上から消え去ってしまった。

もったいなくて、かなしかった。


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コルク