【キナリ★マガジン更新】これからどうしていけばいいのかを診察してもらう(令和ロマンくるま×岸田奈美⑤)

 

人の話を聞けないわたしが対談企画をはじめたら、王者・令和ロマンくるまさんが超高速で分析してくれた記録。

第1回 人の話を聞けないわたしが対談はじめたら、王者が超高速で分析してくれた
第2回 会話に中身を信じすぎだし、頭の中では文章が流れている
第3回 エピソードトークを狙うやつは、白目と黒目が逆転する
第4回 苦手の輪郭がわかってよかったじゃないですか

●イベント終了後の反省会podcast(ゲスト:くるま、糸井重里)は『岸田奈美のおばんそわ』で無料配信中です。noteとあわせて視聴すると、より一層、楽しんでいただけるかと思います!

二時間もの対談が終わり、楽屋に戻ったあと、

「話を聞くのに精一杯で、次になにを話したらいいかわからなくなってしまうことが多々あったんですが……わたしに何が起きていたんでしょうか?」

泣く泣く、くるまさんに聞いた。

「あのね、診断じゃないんですよ!?診察室でもなくて、ぼくゲストですよ!?」

「保険証も持ってますので、どうか……」

「三割負担になるとでも!?」

この好機を逃すまじと濡れネズミの様相で困り果てていたら、くるまさんが『これから岸田奈美の対談はどうしていけばいいのか』の相談に乗ってくれることになった。保険診療は効かなかったので、自由診療で。

目次

  1. 冗談ではなく、ボケで相手に体重を預ける

  2. クッションで時間を作り出す

  3. 一本のエッセイになるような台本を作ろう

  4. 次回「奈美の部屋に引きずりこめ」

冗談ではなく、ボケで相手に体重を預ける


「岸田さんはもうちょっと、相手に体重をドーンと預けちゃったほうが、会話が弾むと思いますよ」

「預けるって、どうやって?」

「ええと、これは芸人の例えになりますけど。冗談を言うんじゃなくて、ボケるというか」

「えっ、どう違うんですか?」

くるまさんが言うには、ボケは相手のツッコミありきでしゃべることをいう。しかしボケには、ツッコミが入らなければ、シーン……となるリスクもある。

対して、冗談はそのリスクがない代わりに、自分ひとりで回収できる距離の話でしかない。

『あー、こりゃオジサンっぽかったか!デヘヘ!』

と、自虐を付け加えると冗談になる。これは相手の反応がなくても成立するけど、目の前で冗談を言われた方は苦笑いするしかない。あまり仲が良くないと「これ、いじっていいの?だめなの?」がわからないからだ。冗談はボールをひとりで持ち続けている。

つまり、冗談ではふたりの距離は縮まらない

くるまさんの説明を聞いて納得しながら、ドキッとした。わたしは取材や出演になると、いつも冗談を言いがちだから。ちょっとでも暗い話になりそうだと思ったら、無理やり笑いに持っていこうとして、シーン……とさせてしまうことがある。

「明るく笑ってもらいたいなら、相手に寄りかかっちゃったほうがいいですよ。大きな声で『なんでそんなに言ってくるんですか!?』ってバッと言うだけでも、ボケとツッコミの会話が始まるから」

「なるほど……」

「あんまり気を使いすぎて『とは言え、わたしはこうだと思うけど……でへへ……』みたいに保険をかけすぎると、相手が乗ってこれなくて、熱を帯びないんです。これは芸人のライブでよくある話なんですよ」

ボケとツッコミは、受容と信頼の話にも置き換えられると思った。

ボケてると思えば、的外れや間違いも怖くない。相手に「え?それどういう意味ですか?」って聞き直してもらえばいいし、「いやそれ、最初にぼくが言ったことじゃないですか!」ってツッコミを入れてもらえたら笑いに変わる。相手を信じれば、空回りを防げるかもしれない。



クッションで時間を作り出す


わたしが冗談を連発しがちなのは、やっぱり、沈黙を埋めようとしている節があるからだ。

「わたしはシーン……が怖いから、冗談でさっさと回収しがちなんですよね……」

「岸田さん、しゃべりにロスタイムがなかったですしね」

「そうですか!?」

「はい。ぼくの話を聞いたあとに『あ〜〜〜!』とか『へえ〜〜〜!』みたいな言葉のクッションがゼロでした」


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