【キナリ★マガジン更新】岸田奈美の2025年ベストドン!(前編)

 

ベストバイ、流行ってますよね。

買ってよかったものを紹介して、
人生こんなによくなりましたってやつ。

……あれ、わたし、書けないんだ。

なぜならば、買い物ヘタだから!
身の回りのすべてが衝動買いだから!

オールウェイズ三丁目の浪費!

いや実は、何年か前までは書いたんですよ。

でも、あの時ベストバイしたもの、ほとんど手元にねえの。天井から汚水が降ってきて、あらかたオシャカになったの。

『形あるものはいつか壊れる』の“いつか”を秒単位で高速更新していく、教訓リアルタイムアタック人生!

しかも今年は家族でフリーマーケットを開催したことに味をしめ、

「うーん……まっ、使わんかったらフリマで売りゃいいや★」

雑な衝動買いに拍車がかかる日々。

安物買いの銭失いで、負けを後から取り戻そうとするアホの投資。こういう人間は、FXなど絶対手を出してはいけません。

ただね、わたしは思うわけです。

ものを買ってよかったことって、
人生という長い単位で見たら、

ンな大したことかよ……?

って。

(※銭失いによる負け惜しみの偏見です)

買ってよかったことより、やってよかったことの方が、わたしは大切だと思っている。汚水でものは流されるが、経験値は流されない。

さらに言えば、

「やってよかったこと」と「やらなきゃよかったこと」の間に

「やりたくはなかったが、なかったことにもしたくない」

という、人間の愚かさと面白さが混ぜ合わさり、滋味深い味がしみ出てくる経験が……巨木のように横たわっているのではないか……?

チャップリンは言った!

人生はクローズアップで見れば悲劇だが,ロングショットで見れば喜劇だ

いまここでは“ワースト”だが、遠い未来で“ベスト”となりうる苦い経験を、わたしたちは、今、この瞬間も、その手に持っているのではないか!?

早めに痛い目を見たから、将来、回避できる道を歩めるのではないか!?

落ち着きなき衝動の民たちに告ぐ。
失敗を、人生の予防接種だと考えよう。

今年は失ったものばかり数えろ !

ーーー逆ジンベエである。

失ったもの&やっちまったことの周りを、遊園地の鳩のごとくポッポポッポーと意地汚くウロウロし、地べたを舐めよう。失ったものから、得たものをほじくり出そう。

転んだら絶対にタダで起きるんじゃねえ!
悲劇は開き直って、武勇伝に錬成しなおせ!

ここで開き直らないと!

ドラえもんが安心して未来に帰れないんだ!!!!!!!

ということで、岸田奈美のベストバイじゃなく、

岸田奈美のベストドン2025


です。

Best(最高) Done(完了)です。

ならダンだろうが!と思うかもしれませんが、響きがいいのでドンにしました。ドン、と腹落ちした2025年の出来事だけ陳列します。

目次

岸田奈美のベストドン2025

ベストやらかしドン

1.不良物件を高額で借りかけた

2.一酸化炭素中毒になりかけた

3.カラスの写真を投稿したら炎上した

ベスト家族ドン 

4.結婚して、夫の実家の寺で挙式した

5.家族でフリーマーケットを開いた

6.弟がグループホームを電撃移籍した

ベスト仕事ドン、ベスト健康ドン(後半)につづく

ベストやらかしドン

1.不良物件を高額で借りかけた

会社員時代の知人から、

「知り合いがめっちゃ味のある物件を手放すんやけど、これも縁やと思って借りてみいひん?」

東京の事務所 兼 住居をすすめられた。

二週間に一度は、仕事で東京に行くし、カフェもホテルも高くなってきてるから、ありえる話だとは思った。

ぼかして話すと、わたしの本をたくさん読んでいるおじちゃんが主をしている、レトロで渋い喫茶店の居抜き……みたいな物件だった。

アクセスは悪いし、築年数も古いし、賃料もそこそこ高い。ふつうなら選ばないけど、現オーナーからわたしの本への熱い感想の手紙も受け取ってしまった。

「老後の趣味にと奮発して改装したけど、故郷に帰ることになったらしくて……岸田さんに使ってもらえたら喜ぶと思うねん!これも縁やし、助けると思って!」

ここまで言われたら、さすがにグッとくる。

経費として計上できる物件なのだろうかと、お世話になってる税理士さんに相談してみました。

「えっと……借りないほうがいいです」

「えっ」

「借りたい理由が、立地とか、デザインとか、他にもっとあるならいいんです。でも “これも縁だと思って……”の枕詞ではじまる高い買い物が、良いものであった試しはないので」

目から鱗。

不動産屋に聞いてみたら、そのバーの物件は、何人もの芸能人や文化人が転々とオーナーを交代しており、老朽化やトラブルで金がかかりまくって長続きせず、縁故でひっそり出回っているのだった。

だめじゃん!
詐欺じゃん!

危なかった。恋愛と同じだ。相手に欠点を越えた違和感があっても“恋”をしている目だと、何もかも覆い隠されて、見ぬフリをしてしまう。

“これも縁だと思って……”から始まる話は、縁以外に良いところがないのである。

「あの時は考えもしなかったけれど、あとから考えると、あれは縁だったねえ……と言えることこそが本当の縁ですよね」

そうだ、そうだ。

わたしが今まで、縁に助けられたり、縁で助けてきたことは、いつもそうだった。後から気づく縁は、今は無意識であることを忘れてはならぬ。


2.一酸化炭素中毒になりかけた

絶対にマネしてはいけない。ガチで笑っている場合ではない。しかし世の中には、こういうタイプの無知が存在するということを真顔で伝えたい。


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