櫻井翔さんと密室で30分間、対面したら2kg太った
2016年、3月。
私は密室で、櫻井翔さんと対面していました。
30分間も。無言で。
いや、本当だから。こじらせてないから。現実だったから。
……たぶん。
説明いたしますと。
我が社が総力を上げて取り組んでいる「ユニバーサルマナー検定」をね。
受講しにきてくださったんです。
嵐の櫻井翔さんが。
NEWS ZEROの担当者さんから
「櫻井翔さんが、ユニバーサルマナー検定の取材をしたいそうです」
とお電話いただいた時。
「なんで?」
っていうタメ口が飛び出た。心からのタメ口が。
この時期の櫻井翔さん、テレビで車いすバスケ選手役に抜擢されたり。
リオ五輪のリポーターに抜擢されたり。
目まぐるしいご活躍をされておりまして。
「障害のある選手にインタビューする時に、失礼がないように学びたいそうです」
という、理由がありまして。
いやいや。
そんな良い人、いる?
気づいたら
「またまたぁ」
って言ってました。人生初めての「またまたぁ」でした。
当日を迎えても、半信半疑で。
櫻井翔さんがご降臨遊ばされるというのに私、枝毛だらけの髪の毛に、瓶底眼鏡。
少女漫画なら「フッ……おもしれーやつ」って言われるビジュアル。
残念ながらここは現実。
つまり準備と調整が大変すぎて、寝る暇すらなかった。
会場のエレベーターから、8頭身くらいあるスーツ姿の男性が降り立った時。
もうね、半信半疑も何も、全部ぶっ飛んだ。
すごい。
めちゃくちゃカッコ良い。
直視できない。
目で見るタイプの点滴だった。
ポタポタ、じゃなくて、点滴の袋を力の限り押し絞られてる感じ。
ギュウウッと。
そんで、私、駆け寄ってね。
「櫻井さん!今日はよろしくお願いします!」
なんつって、我先にと挨拶したんですよ。
うん。
完全なるマネージャーさんだったのね。
びっくり。本当に直視できてなかった。
でもマネージャーさん、めちゃくちゃ櫻井翔さんに似てた。
失礼極まる走り出しでもう頭真っ白になっちゃって。
気づいたら、櫻井翔さんが目の前にいました。
360度、どこからどう見ても櫻井翔さんだった。
車いすに乗ったまま扉を開ける、っていう激難しい体験も。
「あーなるほど」と呟いて、一発クリアしてて。
いるんですよね。
世界の主人公って。
そんで、私。
高齢者体験キットを櫻井翔さんに装着するという役目を仰せつかりまして。
たぶん、この先、一生いないよね。
櫻井翔さんを高齢者にした女は。
腰のサポーターと足のサポーターを紐で結んで、
膝を強制的に曲げさせるっていう機能があるんですけど。
じゃあ装着しますねーって言って。結んだんだけど。
足、なっげーの。
めちゃくちゃ、なっげーの。
なんて言うか、想定外の長さ。
私の足が青森〜広島間くらいだとすると。
櫻井翔さんの足、シベリア〜シドニー間くらいあった。
季節すら越えていく、足の長さ。
全然、キットが追いついてなくて。
彼のプロポーションに。
高齢者どころか、マスター・ヨーダ?ってくらいの頭身に、なっちゃって。
やべえ、このままじゃ櫻井翔さんをヨーダにした女になってしまう。
櫻井翔さん良い人すぎて「これはつらいですねー!」って。
すっごいキラキラした目で見てくる。いたたまれない。
紐がもう限界。パッツパツ。はじけりゃYea!状態。
なんとかかんとか紐を調整しまして、その場を切り抜けました。
ちなみにこの間ずっと、カメラ回ってますから。
もう、一歩間違えれば事故!的な状況で、間違えまくりつつ、ひと通り体験が終わって、最後に筆記試験。
櫻井翔さんはコンサートのリハーサルで超多忙だったのに。自主勉強したノートを持ってきてくださってたんですよ。
これがまた、自分で勉強してくださったであろう書き込みがビッシリで。
なんかもう。圧倒されてしまって。
真っ先に浮かんだ感想。
「櫻井翔さんって、文字書くんだ」だった。
「知的障害のある方って運転免許を取られる時、どうなさってるんですかね?聴覚障害のある方が運転しているマークはありますよね」と、テキストに書かれていない範囲まで想像して、質問してくれる櫻井翔さん。
尊すぎて私は「アッ……アッ……」としか言えないカオナシ状態だった。
(後でちゃんと答えました)
で。冒頭の密室です。
30分間の試験監督を私が務めることになり。
正直、収録が無事に終わるのかでいっぱいいっぱいで、全然自覚なかったんですけど。
目の前で問題を解いてる櫻井翔さんを放心状態で眺めてて。
15分くらい経った頃かな。
唐突に押し寄せてきた。
この、非現実的現実が。
私、座ってただけで、何もしてないんですけど。
なんか急に、足がつった。
すごい。人は許容量以上のイケメンを見ると、足がつる。
耐えれてない。
私の関節が。
イケメンに耐えれてない。
そんなこんなで、物理的に負傷しながらも、
無事に収録は終わり、櫻井翔さんは驚異の100点で合格されました。
100点ってすごいんですよ。
当時の試験だと、100点なんて50人に1人、いるかいないかなので。
放送後、一瞬で半年先まで、ユニバーサルマナー検定の席が埋まりました。
櫻井翔さんのおかげで、多くの人が、障害者や高齢者に向き合おうと思ってくれた。
めちゃくちゃありがたかった。
ただ一つ、謝るべきことがあるとすれば。
放送後、ピンク色のジェットストリーム三色ペンが、飛ぶように売れたんですよ。
Amazonだと、売り切れたりして。爆売れ。
なんでかって言うと、試験中に櫻井翔さんが使っていたシーンが映ったので。
ごめんなさい。本当にごめんなさい。
あれ、私のペン。ただのペン。
ディレクターさんにシャーペン無いから貸して、って言われて、貸したんです。
でも櫻井翔さんが使って100点を取ったペンであることは間違いないから、ご利益はあると思うんだ。多分、あると思うんだ。
それと、全く関係ないんですけど。
収録が終わった後、体重計に乗ったら、何も食べていないのに2kg増えていた。
体が、生きようとしている。
許容量を越えたイケメンに会って、死を覚悟した体が。
冬眠前の熊かよ。