【キナリ★マガジン更新】砂漠はやることないから、馬で崖を登れ(ウズベキスタン新婚旅行)

 

遊牧民の壮大な暮らしにあこがれて、ウズベキスタンの砂漠でキャンプすることにした。

「今日はここで焚き火を囲んで、伝統音楽で踊って、旅人たちと語えるんや!」

……。

…………。

すること……ねえな……?

ユルタ(テント)にはベッドしかなく、見渡す限りの荒野。まだ14時だ。他に宿泊者もおらず、ピュ〜ヒュルル、と北斗の拳でしか見ないような枯れ葉の転がる風が吹いている。

ヒマだ!

森林でヒマなのと、砂漠でヒマなのは、わけがちげぇの。まったく癒されない。本能的に身の危機を感じる。

キャンプ地を徘徊していると家族経営らしきスタッフの一族が、そこらへんのソファやベンチでゴロゴロしてた。気まずい。

ひとりのおじさんと目が合った。

「……?」

「どうも……」

「ぼくのラクダにでも……乗る……?」

ラクダ界の三島由紀夫?


凛々しい下がり眉が絶妙なおじさんについていくと、コバエがぷわんぷわん舞いはじめ、




ラクダだ。ラクダって触っていいんだっけ。MERSとか感染するんじゃなかったっけ。

「だいじょうぶさ。この子たちは安全。おじさんのラクダだからね」

ポケモンにおけるきんのたまみたいだね。

コブがふたつあるラクダっていうのはもう「乗ってくれ」と言わんばかりに、わざわざ背がくぼんでいる。どういう進化なんだ。銀ダラや牡蠣に対する「お前らは食べられるために生まれてきたんか」と同じ種類の疑問。

「おっ……!うおおおおおおっ!」

立ち上がる時の勢いがすっげえ怖い!

ブウンッッッてそのまま上空に放り出されるかと思った。鉄拳だったらそのまま6連コンボを決められてしまう。

新婚と知るやいなや、ラクダ由紀夫はにっこりと笑って、

ラブラブ♡ラクダ写真を撮らせてくれた。

ちなみにこのラクダたちは仲睦まじそうに寄り添っているように見えるが、実際はおじさんの指示により、わたしとみずきくんがお互いの手綱を強めに引っ張り合って、無理矢理近づけてるだけである。本当はうまくいってないことを隠しているカップルYoutuberの風刺画?

ラクダに揺られて、キャンプの外へ。

「あれは?」

「砂漠ネズミ」

「あれは?」

「砂漠ガメ」

「じゃあ、あれは……えっ……あれは!?」

大地に開いたデッカイ穴に、おびただしいゴミが投げ捨てられていた。やばい。見てはいけないものだ。

「……」

ラクダ由紀夫が黙る。消される。これを見たからにはお前の今夜の宿はあの穴だよエンドだ。一瞬にしてミッドサマーの緊張感に包まれたが、砂漠ではよくあることらしい。命拾いッ。

ラクダに乗り終わった。

「あ〜、楽しかった〜!」

30分しか経ってなかった。

砂漠ガメの甲羅をかくとと気持ちよさそうだったので、かいた。

10分しか経ってなかった。

どうすんの、これ……。

仕方なく開店前の薄暗い食堂で、ひたすらスマホを見て過ごした。スタッフたちもずっとスマホを見ている。砂漠にはスマホ中毒しかいない。

大型ワゴンで外国人の観光客も運ばれてきた。ハローと挨拶しても、愛想笑いでペコッとやられるだけで、そそくさと散っていく。

薄々思ってたけど!
ウズベキスタンの観光客、あんま喋んなくない!?

旅慣れてないくせに人とは違ったことがやりたくて、物価の安さにつられてノコノコやってくる奴ばっかってこと?それわたしだわ!

(※偶然です)

スマホに飽きて、Nitendo Switchの『都市伝説解体センター』にまで手を出し、エンディングまで見たところでやっと夕食の時間になった。

長い戦いだった。

ふやけた麦のおかゆ、デザートはウエハース。パッサパサやで。

「うん……まあ……砂漠やもんね。食べられるだけありがたいよ」

朝も同じほぼメニューらしい。

いや、いいんだ。食事には期待してない。今から待ちに待った音楽隊の演奏が始まるのだ。これだ。星空の下で、歌って踊るためにここへ来たんだ。

「音楽の準備ができましたので、焚き火の前に集まって」

きたーっ!

……うん!
思ってたより小ぢんまりしてるけど、まあ、いい感じじゃない?

ところでお前は何?


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