【キナリ★マガジン更新】【毎日更新】会話に中身を信じすぎだし、頭の中では文章が流れている(令和ロマンくるま×岸田奈美②)
人の話を聞けないわたしが対談企画『岸田奈美のえんがわ』をはじめたら、王者・令和ロマンくるまさんが超高速で分析してくれた記録。毎日20時更新です。
第1回
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1.会話には中身があると信じすぎていた
白状すると、わたし人の話を聞くのがつらい。苦手な以前につらい。
むずむずしてジッとしてられず、指で遊んだり、窓を眺めたりしてしまう。集中できてないので、何度も聞き返してしまう。
「じゃあもう、対談しちゃだめな人じゃん!」
くるまさんに、大声で言われてしまった。
「た、たしかに……」
どんな時に退屈でたまらなくなるか。それは「これって、なんの話なの?」と思ってしまった瞬間だ。
意味のない会話、読めない会話、どうでもいい会話を、聞いていられない。
「岸田さんは、会話に中身があると信じすぎてるのでは……?」
「えっ、会話って中身なくていいんですか!?」
仰天した。そもそも中身のない会話など、この世に存在しないと思っていた。
なんでそんな風に思ってるかというと。人が何かを話す時には、以下の3つが必ず隠れているとわたしは思っていた。
・なぜその話をしようと思ったのか?(動機)
・その話で何を伝えたいのか?(主張)
・聞いてる人にどうしてほしいのか?(欲望)
相手の話に眠るこの3つの秘宝を、ターン中に探り当て「これだーッ!」と差し出すべきだと。
例えば、
『さっき駅前でおじさんが、小銭ひっくり返しててさ……』
と話されたならば、あっ!この人はなんかモヤモヤしてるんだな(動機)、おじさんを助けられなかったことを後悔してるんだな!(主張)、それでこのわたしに励ましてほしいんだな!(欲望)までを一気に予測し、
『そうなんや!でも、きっと誰かほかの人が助けたと思うし、急いでたんだから仕方ないよね、なんなら今から拾い忘れないか見に行っちゃう?』
を言えるまでが、会話のスマートなキャッチボールだと思っていた。
だから、手がかりが掴めない話や、知らない概念や単語が出てくると、頭が処理落ちして、それ以上聞くことに集中できなくなるのだった。
くるまさんは、ホゲェーっと呆れていた。
「ぼくもそうですけど、たぶん、ほとんどの人はそんなに意味のあることをしゃべってないと思いますよ」
そ、そんな……わたしったら、存在しないお宝を探してたっていうの……?
「くるまさんはどうやって話す内容を決めてるんですか?」
「決めてないです。ぼくは自我がないので」
「自我がない!?」
「朝にテレビで見聞きしたことを、昼にそのまま誰かにしゃべってます。……で、昼に誰かから聞いたことを、夜にまた別の誰かにしゃべります」
「それは……なんか、うまく頭の中で編集して、おもしろい話にしてから?」
「いや、本当にそのまま。言葉の転売ヤーです」
言葉の転売ヤー……だと……?
「楽屋でもよく、ZAZYさんと“行動経済学がなー”とか“脳科学的にはなー”とか、お互いテキトーなことをワーワーしゃべりまくって、聞いてんのか聞いてないのかわかんない状態で新しい言葉だけを入手して、それをまた他人に伝えるため散り散りに旅立っていくというか」
「えっ、それ、くるまさんは理解できてるんですか?」
「理解してなくていいんですよ。ずーっと場に音が鳴ってたら満足なんで。情報が行き交ってたらいい。ぼくは一人称も“東京”ですから」
常に情報と人間が集中して、うごめき続ける東京を自称するのがくるまさんだった。自認の例えがすごすぎる。
「東京だったんだ……」
「なんなら、一度教わっただけのピラティスも、ぼくが三十人ぐらいにしゃべって教えました」
「ぼくはしゃべりで入力して、しゃべりで出力してるだけなんで、まったく頭を使ってないです」
「……もしかして、くるまさんは、会話で疲れたことないですか?」
「マジで1ミリも疲れません。なんならこのイベントも終電までやれます」
おののく会場。
本当に終電までやりそうな気配である。
会話の真意を掴むことに全集中で脳を働かせているわたしには、会話がそもそも、疲れないものだということにもびっくりした。
2.文系の中の理系は頭に文章が流れてる
会話を“場に音が鳴ってる”と捉える人がいるなんて、目から鱗ポロリだ。
わたしは話を深読みしすぎだったのか。でも、一体どうして、そんなことになってしまったんだ。
「もしかして岸田さんは、文系の中の理系なんじゃないですか?」
「ええ!?ハイパー文系だと思いますよ!しゃべるより文章書く方が楽だし」
「あっ、それが文系の中の理系です。文章にできてるんで」
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