【キナリ★マガジン更新】こんな時代だから、会いたい人になろう(イ・スラ×岸田奈美)8/8
誰からも依頼されずに文章を書く、韓国人の作家、イ・スラ。
借金を返し、家族を養うため、インターネットで文章を売る彼女。並々ならぬ親しみを抱いた岸田奈美が、どうしても友だちになりたくて、韓国まで行きました。書くことで生きるふたり、打ち明け話の最終回です。
▼会いに行くまでの話
▼第1回
岸田
スラさんと話したら、あなたはもっともっと、
世界から注目されて、称賛されるべき人だなって、
ますます思いました。
スラ
うれしいなあ。
ありがとうございます。
岸田
で、そんなスラさんに親近感を覚えるわたしも、
その片鱗がちょっとあるのかもなって……(笑)
勝手に勇気をもらいました。
スラ
ありますよ!
岸田
あはは。
スラ
韓国と日本の文学への関心が、
世界で高まってほしいという気持ちはありまして。
ただ、まあ、日本の文学はもうすでに、
かなり注目を浴びてますけれども。
岸田
2024年のノーベル文学賞は、
韓国のハン・ガンさんでしたよね。
スラ
そうですね。すばらしいことです。
韓国からわたしも、がんばりたいなって。
岸田
日本の小説やエッセイも読みますか?
スラ
わたしは日本のエッセイストだと、
佐野洋子さんが好きで。
岸田
ああ、佐野洋子さん!
いいですね!
いま有名な文学界の巨人たちと
肩を並べられたらと憧れたこともあったけど、
今はちょっと違うんですよ。
えっと……なんだろう……。
スラ
はい……。
岸田
文学を越えた、なんか、
文学っていう枠にはおさまらない、
説明ができないところにも、
スラさんは行くような予感がしてて。
というか、わたしたちは。
スラ
うん、うん。
岸田
わたしの読者さんで
実は「本を読んだことない」って
打ち明けてくれる人、
かなりの人数がいて。
スラ
おお。
岸田
読んだことはあっても、
普段はぜんぜん読まないっていう人も
多いんですよ。
スラ
そっか。
わたしも、わたしがきっかけで
本を読み始めたって言われて、
すごくうれしかったことを思い出しました。
岸田
テレビ大好きっ子なお母さんのために
開発された文体ですしね。届きますよね。
スラ
うん、やっぱり、わたしは
伝統的な「文学!文学!」ってところで、
作家がやれてるわけじゃないんですね。
文学と呼ばれようが呼ばれまいが、
わたしたちふたりにとっては、
あまり重要なことではないのかなって。
岸田
うん、うん。
スラ
おもしろいと思ってもらえるか、
また読みたいと言ってもらえるか、
そういったところを追い求めているのかなと。
岸田
わかります。
スラ
というか、紙の本っていうもの自体、
かなり、危機に瀕してると思ってて。
たとえば、あの、ショート動画とか、
そういったものとかと張り合っていく時に、
文章ならではのおもしろさって何かな?って……
最近の悩みでもありますね。
岸田
わたしはけっこう、
ショート動画で文章を楽しんでもらってて。
スラ
えっ!?
どうやって?
岸田
これですね。
TikTok。
スラ
TikTokで!?
(ふたりでしばし、岸田奈美のTikTokアカウントを見ながら)
スラ
ああっ、なるほど!
へえー……
こんなことできるんだ。
わーお!
岸田
TikTokはとにかくテンポの良い文章で、
一枚目からおもしろそうなシーンを見せると、
読んでもらえるなあって思います。
スラ
すごい。
岸田
わたし、書くことよりも、
伝わることに喜びがあって。
スラ
奈美さんは柔軟で、
最前線で活躍されてますよね。
岸田
いやいや!
それを言うなら、わたし、
スラさんのInstagramに上がってた
アニメーションを見たとき、
声が出るほどびっくりして。
スラ
これ作ってくれたの、
実はわたしの教え子なんですよ。
文章教室の。
小学生の頃に教えていたら、
もう今、20歳になって。
アニメーション監督になったから、
コラボしたんです。
岸田
いいなあ!
もうね、それ、それです。
イ・スラ ファミリーでこの世界を
席巻していただきたい。
スラ
ふふふ。そうだ。
Chat GPTが出てから、みんなが、
AI で人生がどう変わっていくのか?を
毎日のように話してるんですけども……。
そういう話、奈美さんはしますか?
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