【キナリ★マガジン更新】歩くだけでガバガバ概念などに出会える(万博走り書き②)

 

大阪・関西万博に行ったことを走り書きしました。ワーワー言うてるだけで、参考になるような情報はここにはないです。

絶対に損をしたくない万博には疲れた!なんも調べとうない!でもなるべく楽しみたい!そんなわたしのような人がいれば、まず、思い込んでほしいことがある。

「ここってテーマパークなんでしょ!ユニバーサル・スタジオ・ジャパンみたいな!わ〜〜〜っ、楽しみ!」

ちがうよ。

たぶんデケェ公園だよ。


以上です。

もっと言えば、超ナウい公園なのでかっこいい建築物があって、ちょうどお祭り期間中なので、その軒下で陽気な町の住人がいろいろ出し物してる。

テーマパークっていうと、どうしても「わたしを楽しませてくれるんでしょ……?」って思っちゃうので、その姿勢でいくと呪われる。

万博がショボいというわけではない!万博はただただ何もかもが、広すぎて、多すぎて、カオスすぎるだけではないかと!

たとえば、高校の文化祭に行ってだな、

「絶対にあのクラスのチョコバナナを並んで食べるぞ〜っ!」

「3年生の劇で一生に一度の号泣してみた〜いっ!」

とか、思わんだろ!

せいぜい、

「この子の客引きは一生懸命だから買ってあげたいな〜!」

「やべえ……生物部の地味な展示だと思ってたら、デスマスク飾ってんじゃねえか……」

こんな感じだろ!そんでそこそこ楽しいだろ!

出し物してる住民にもいろいろな人がいるので、なんか実家の蔵に眠ってた世界遺産を持っくる長老とか、予定にない謎のダンスを踊りだす若者とか、永遠に自国のブースで眠りこけてるおばちゃんとか、クオリティの差もむちゃくちゃ激しく、そして、それらは事前に調べてもあんま意味がない。

デケェ公園で、何に出会うかはガチャ!


これぐらい意識の低い思い込みを持ちながら散歩すれば、目に映るすべてが、おもしろさマシマシで襲いかかってくる。

「楽しませてくれるんでしょ?」ではなく「楽しめそうなら楽しんだらあ!」という、頭だけを攻めの姿勢にしておけば、どこを歩いても楽しい。



目次

  1. デケェ公園で、何に出会うかはガチャ!

  2. 舞洲P&R駐車場と西ゲートから入場

  3. デケェもんは見るとデケェってなる

  4. 大屋根リングに登るとはかどる

  5. 「予約イラナ〜イ!スグハイレ〜ル!」

  6. 海外パビリオンの中に外ほどの期待はない

  7. クソデカスクリーンに飽きることができる

  8. ガバガバ概念に殴られよう

  9. コモンズは己のエンタメ力が試される

  10. 場末の旅館っぽいお土産もいっぱいある


舞洲P&R駐車場と西ゲートから入場

西宮から車で8時半ぐらいに行ったら、開園のピークタイムのはずが、ガラガラすぎて不安になった。

高速道路で30分ぐらいだし、シャトルバスも空いてて、ほんまに来たんかしらというぐらい拍子抜けのスタート。

車のナンバープレートを登録するとか、バスの予約画面を見せるとか、なんか細々した作業がいるんやけど、スタッフの人も「そんなん全部やるの忘れて浮かれポンチで来たやつ」への対応に慣れてるんで、準備が甘くても、現場でどうにかしてくれることを悟った。

出会った人を頼ろう。頼るのはね、人生の練習だからね。

9時すぎに東ゲートから並ぶ。荷物検査40分ぐらいかかった。

めちゃめちゃピシッとしたスーツにでっかいカバン、または平成の女子中学生みたいな謎のショップ袋を下げたサラリーマン二人組の組み合わせが、やたら多かった。何者なんだ。困惑してるうちに順番が来た。

入園して10分後にスマホアプリか、会場のモニターから、パビリオンの当日予約ができる。まあ別に、大変ならムリしてやるほどのことではない。

デケェもんは見るとデケェってなる

まあ、わたしみたいなろくに下調べもしてない人間が入園したら、あてもなくさまよい始めるじゃないですか。

歩いているだけで、デカくてワケのわからん建築物を浴びることがきる。茨城県に牛久大仏ってあるやないですか。あれが数十体、EXILEのChoo Choo TRAINみたいな感じで、次から次へと……!

デカくてワケのわからん建築物をぜんぶ見て、

「すげー」

つって、アホみたいに口開けて歩いてるだけで、一日が余裕で溶けます。わたしのように。

大屋根リングに登るとはかどる

人は羅針盤を失うと遭難するんで、なんかひとつ「これだけはやる」ってことを決めておいた。できるだけ簡単なそうなやつがいい。(落合陽一さんのnull2に入場!とかにしちゃうと激戦なので難しい)

大屋根リングに登るとか。

エスカレーターがあるので、スイスイ登った。いろんなパビリオンを見下ろせるので、そのままぐるぐる回り続けて、バターになっても良いし、

なんでカナダ館はこんなにカクカクしてんだろ……って思ってたけど、上から見たら「これ流氷かい!」のアハ体験ができた。

なんで屋根片方しかないねんと思ったら「片方を鏡で反射させる、びんぼっちゃまスタイルかい!」のアハ体験もできた。

「予約イラナ〜イ!スグハイレ〜ル!」


いろんなパビリオンを回ってると、特に海外パビリオンの前で、この言葉が聞こえてくることが何度もある。万博でみんなが一番好きな言葉です。

セイレーンの歌声に匹敵するその響きに誘われ、まんまとオマーン館に吸い込まれた。

予約がいるパビリオンでも、なんかタイミングによっては、予約なしですぐ入れてくれたりする。

「予約イラナ〜イ!スグハイレ〜ル!」的な言葉が聞こえてきたら、または聞こえそうだなと思ったら、悩む前に吸い込まれた方がいいと学んだ。

なぜならば……

海外パビリオンの中に外ほどの期待はない


これ言うたら怒られそうなんやけど、10個ぐらい飛び込んでわかった。

いや、中には貴重なアートとか、おいしい食事とか、特色はあるんよ。でも、わたしみたいに「はいつくばってでも絶対に見たいモン」がない人間だと、並ぶ時間とか混雑とか考慮したら、うん、まあ……どれも満足度はそんなに変わらん……。

海外パビリオンでは各国の最新技術や誇るものが展示されるのだが、2025年ともなると、各国だいたい技術力も課題も、同じになってくるわけで。

クソデカスクリーンに飽きることができる

「またクソデカスクリーンかよ!」と嘆きたくなるぐらい、海外パビリオンに入ると、クソデカスクリーンで壮大な動画を見せられます。

最初はキレ〜ッ!ってテンション上がるので、ここで一生分のクソデカスクリーンを見ておいた。

「壮大に説教くらわせてくるパターン」か「いい感じで景色だけで持たせるパターン」か「CGの力で何が本当で何が嘘かわからないが、なんかすごいような空気を作り出すパターン」の三種類が主です。

こういう感じで部屋に何十人かずつ集められて、一斉に見るんだけど「おれたちは一体……なにを見せられているんだ……?」と思いはじめてからが、おもしろくなってきた。

なんか黄金のゲートみたいなのがあって、たくさん人が並んでたから「どれどれ」と入ってみたら、

奥のあっさいあっさいところで、CG映像を見せられる行き止まりだった。ちくしょう。

ガバガバ概念に殴られよう

ということで、こういうものをよく見ます。

「健康!教育!」

「精神誠意!」

「大地!人!水ゥ!」

ガバガバ概念。

わたしこれめっちゃ好きで、ガバガバ概念を集める人と化していた。ガバガバすぎて何かを言ってるようで何も言ってないが、やる気だけは伝わってくる。ダメなファイナルファンタジーみたいなメッセージ性。

国という巨大ないきものがね……こう……平和で壮大に誇らしいことを言おうとすると……なんも言えんくなるんや……。

北欧館なんて北欧5ヶ国の共同出展なので、1ヶ国だけが出しゃばって個性的なことが言えんくてこうなったんやろうな、という気まずさがビンビン伝わってくる。機械的な言葉に人間味を感じる日がくるとは。

コモンズは己のエンタメ力が試される

コモンズっていう、体育館みたいなパビリオンもあって、ここにはギューッと国々の展示ブースが集まってる。

ここは万博の中でも随一のカオス。国によって展示してる質の差が激しい。張り切って試食とかイベントとかやってる国もあれば、なんかずっとフェイスブックやりながら地べたに座ってる外国人スタッフもいる。

ありえないほど荒い解像度で、ガビガビになった野球選手も見れる。あんまり見たことない。ガビガビになった野球選手。

ブルキナファソなのに、なぜか日本の懐かしさあふれる言葉づかいと筆跡。親の顔より見たような気がしてくる佇まいの貼り紙。

コモンズこそ、楽しもうという能動的な己が試される、修行の場所である。

白地図を持ってきて「あなたの国を塗ってください!」とスタッフに頼む子ども、名前も聞いたことない国だけに絞って見る老夫婦、修羅の顔でひたすらスタンプラリーを連打していくおじさんなど、各々が楽しむ姿に胸を打たれた。ここをどうにかこうにか楽しめる人は、きっと幸福度が高い。

場末の旅館っぽいお土産もいっぱいある

お土産は公式ショップとかシグネチャーパビリオンは、クオリティが安定して面白いものがたくさんあったけど、海外パビリオンは高くて当たり障りないものか、一発芸ご用達みたいなのが多かった。

各国が何を売るかは一切合切森羅万象カオスカオス!なので、韓国館とかは奥の奥でゴリゴリに健康器具をおばちゃんたちが売ってた。

一応、営業を受けたら、無料で使わせてくれるらしい。メタ的に見ればこれも海外旅行である。

おいしいものは探すのではなく狩る

SNSでは連日、万博で食べるべきおいしいフード情報であふれていた。どれから食べようか迷う。わたしもそうだった。

でもその考えは捨てることになった。われわれが取り戻すべきは、野生の本能である。

すなわち、ほとばしる食い意地!

なぜならば、SNSでおいしいと言われたフードはもう大抵、食い尽くされているのである。これが情報社会。運よく残っていても、そこではハンパない行列がおれたちを待っている!

腹が空いている時に、炎天下で並んでられっかよ。ピッツァもクロワッサンも、帰ってから食べログでうまい店を見つけて行けばええんや。

食べものは「ちょっとお腹すいたかも?」ぐらいの段階で、目についた一番空いてそうなところに飛び込み、狩るように食べることを繰り返した。

トルクメニスタンのシェクシェキ、砂糖と油にまみれたはちみつ味の何か。大洪水のあとに食うかりんとうの味。爆裂カロリーのくせに後味が消えるので、これを狂ったように食い続けて止まらない羽目に。

絶品かと言われたら首をかしげるけど、トルクメニスタンのカフェはテラスがあって、ここで足を伸ばして体力が回復した。

となると、別に、食べ物の味とか値段とか、トータルで見るとあんまりどうでもよくなるわけである。わかるだろうか。目についたものを狩れ。

オーストリア館の横にはワゴンがあって、誰も並んでいなかったので、ここでもノータイムで注文。

ソフトクリームはね……「ソフトクリームを食べたいなあ」と思った時にはもう遅いのです。食べたくなる前に食べる、予(よ)ソフトをするとわたしは決めた。

まあ……オレぁバカだからよ……ソフトクリーム二連続やっちゃったよ……。うなぎパイソフトという看板を見て「うなぎパイソフト!?」と言い、次の瞬間には「うなぎパイソフトだ……」とネロネロ舐めてた。

日本が運営してる発酵食品のレストラン。海外の名産を食べないと損かも……という欲は捨てた。お腹がいっぱいだと、なにを見ても楽しくなれるので。

目についたものをパッと買って「なんなんだ……これは……」って言いながら食べるぐらいが、結局、おもろいのだ。そして海外料理といえど、ここは日本なので、大体なに食べても、そこそこうまい。そして、公園で食べるもんは、さらに5割増しでうまい。



イタリア館とは一体なんだったのか

めちゃくちゃ話題なので、イタリア館には行った。

紀元前の彫刻とか、キリスト教の絵画とか、見れた。それはよかった。見れたから。

「貴重なもんを見れたんやろなあ」という情報を食ってるような気もしなくもないがそれはわたしの教養が浅瀬のせい。

ただ、動線が、終わっててな……!


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