【キナリ★マガジン更新】心のなかで抱えているうちは、本音は本音じゃない
前回、植物状態の旦那さんを24時間見守っている奥さんの話を書いた。
家に帰ったあと、何気なく母に話したら、
「ううっ……」
鼻をすすりながら泣いてしまった。
「あかん……なんか思い出してもうた……わかる、わかるわぁ……」
母の記憶にぐわんぐわん共鳴したのは、重い障害が残った旦那さんを、奥さんが連れて帰りたいと思ったくだりだった。
「夫婦って理屈じゃないのよ。いざとなったら、わたしの体なんか壊れてもいいって覚悟したし、一生懸命働いてくれた主人をいたわるのは、当然の愛だと思ったのね」
夫婦は理屈じゃない。 奥さんの言葉が重く響いた。
「とにかく家へ連れて帰ってあげたい!としか思えなかった」
「パパが心筋梗塞になった時、先生から『手術で命が助かっても重い障害が残るかもしれません』って言われてん」
父が意識不明のまま救急車で運ばれたのは、20年前の深夜のことだ。かなりつらい記憶なので、母はあまり語ろうとしてこなかったから、急でびっくりした。
「なんて答えたん?」
「とっさに『それでもいいです、手術してください』って言えた」
後から到着したばあちゃんたちは、それはそれは猛反対したらしい。
「ダウン症の良太を育てながら、浩二<父>さんの介護して、働きに出るなんて無理や。お願いやからよく考えて……」
それでも母は、絶対に諦めなかった。
「お世話も仕事もなんでもやります。だから、どうかパパの命を助けてください」
まっすぐに先生へお願いして、手術がはじまった。手術中のランプが光ってから母は、なんてことを言ってしまったんだろう、と呆然としたそうだ。
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