恋愛って人生の答え合わせすぎて、わからないにも程がありませんか

 

2025年5月発売「すべての悩みは武器になる〜水野敬也と岸田奈美のLOVE相談〜」にわたしが書いたまえがきという名の絶叫を全文掲載します。

生きてるだけで、当然のように恋愛ってやつを考えさせられますけども!

冷静に考えたら、うちら、恋愛の何もかもを習ってないわけで。

大海原に突然放り出され、まわりをキョロキョロしながら、見よう見まねで恋愛をして、それで暮らしを変えたり、家族を作ったりするなど、人生の分岐点まで全速力で爆走してるわけです。

えっ……みんなは、これ(恋愛)を、ちゃんとできてんの?


っていうか、恋愛ってそもそも、おかしくないですか!?

だって、恋と愛、でしょ。

恋は相手を振り向かせて手に入れたいという思いで、愛は相手をいたわって大切にしたいという思いでしょ。

平気な顔で「俺ら二人でひとつっしょ?」みたいな顔してますけど、君ら、全然、真逆の意味でしょ。真逆のことを同時に出力するのが恋愛って、それ、腎臓ぐらい繊細なことをしてるわけでしょ。

なに?
恋をすることで、愛が育つ?

その論理でいくと、恋人の上位互換は、愛人でしょうがっ!!!!!

なんなんですか一体っ。

ハアッ……ハアッ……。

失礼、取り乱しました。

正直に打ち明けると、わたしはね、恋愛ってやつが怖いんです。自分が相談するのも、他人の相談に乗るのも。人生の中で恋愛って、あまりに巨大で刺激的なイベントすぎるから。

でも、30歳になり、数にして6人目の彼氏と盛大に別れた瞬間、どうやら思い違いをしていたのではないかと、目が覚めました。

人生に、恋愛があるんじゃないんです。

恋愛には、人生があるんです。



人生っていうと、親にどんな言葉をもらって育ち、学校ではどんな教科が得意で、どんな友人とどんな遊びをして、どんなアルバイトに受かっただの落ちただの、ポケットモンスターでは三匹のどいつを選んだか、みたいなすべてが詰まってるわけですよね。

恋愛っていうのは、その混沌とした人生の、抜き打ち!答え合わせ!みたいなところがあるんですよ。

わたしたちは恋愛の何たるかをろくに習ってきてないから、自分が愛されたように、あるいは、愛されたかったかのように、他人のことを愛そうとする節があります。

そりゃ、巷に小細工はあふれてますよ。わたしだって、涙袋さえ盛ればモテると信じ、長年に渡り、光る袋を建設をし続けた建設業の一人です。でもね、結局は、恋愛の土壇場では人生でぶつかるしかないんです。目の細さを考慮できずに拡張し続けた涙袋も、違法建築で撤去されました。

だから、わたしは恋愛がうまくいかないと、盛大に傷ついてきたんです。それはまるで、人生を丸ごと否定されるようなものだから。

……つってね!
傷つきたくないわたしは、恋愛というテーマからは逃げ続けてきました!

水野敬也さんに会うまでは。


かつて、わたしは『スパルタ婚活塾(2014年,文響社)』という名著というか怪著というか、とにかく凄まじい本を読みました。

著者が迷える婚活プレーヤーに向けて、独自の理論を次々と展開する本なんですが、そこに「ラコステ餌づけ」という、女が男をドキッとさせる技の指南がありまして。

“男がラコステのポロシャツを着ている場合、トレードマークの「ワニ」に対して餌付けをするという名目で、野菜スティックをワニの口に刺すという技。さらにこの技が優秀なのは、ラコステのマークがだいたい男の乳首の上に来るということである。”

爆笑と驚愕の波状攻撃で、脳のミソが焼けるような衝撃を受けました。ジュッと。その衝撃で、著者である水野さんの名が永遠に脳へ刻まれることになったのです。

感動したのは、こういう一つ一つの奇策に、水野さんはいちいち「理論」と名づけていることです。理論というのは、他人にわかりやすく説明して納得させるために、打ち立てられるもの。

つまり、理論とは、優しさです。

すごい。この人は、こんなにもバカバカしいことを、恋愛に翻弄されるわたしたちのために、本気で考え抜けるんだ!本気で笑わせてくれるんだ!

うまくいかない恋愛にやさぐれていたわたしは、水野さんという強大な味方がこの世のどこかにいるというだけで、なんだか元気がわいてきたのです。

(初めてお会いした日に伝えたところ、笑わせようなどとは微塵も考えておらず、超真面目に理論を構築していたらしい水野さんを絶句させてしまい、申し訳なかったですが……)

とにかく、恋愛に関してわたしが絶大な信頼を置いている水野さんとならば、禁じられた恋愛相談をやりたいと思えたのです。

いざ相談を募集してみれば、くるわ、くるわ、切実な恋愛の悩みの数々が。

もしかして人間って、恋愛で一生悩んでんの?



でも、ひるむことはない。
なぜならここには、水野さんがいるから。

恋愛の伝道師として、相談者からは一段も二段も上手から、シャープでアメージングなアドバイスをしてくれるはずだと、わたしは信じて、疑いませんでした。わたしなんて、ちょっとファニーな相槌を打てばいいでしょう、ぐらいに思ってました。

そんなことはなかった。


上手からなんて、とんでもない。わたしたちったら、いまだ泥臭い恋愛の輪廻に惑っている相談者と、同じ土俵に飛び降りて、はっけよい!過去のみっともない恋愛の記憶を引きずり出されては、きたねえ涙と、きれいな汗を流しながら、のこった!のこった!

気づけば、死ぬ気で回答を探してました。

なにを……一体、なにをやっているんだ……?

水野さんとわたしの回答を振り返ると、様子のおかしい言葉が、度々飛び出てくることがわかります。

「恋愛の武器商人」
「炎の阿波おどり」
「ポメラニアン丸刈り」

およそ恋愛相談で聞いたことないようなパワーワードが、ボコボコ生まれてます。でもね、もう、これぐらいハチャメチャな例えをしないと、回答ができなくて。

わたしたちの、恋愛に対する巨大すぎる感情を、共有できる言葉は、まだこの世の中にないのだよ。

己の持つ過去をさらけ出し、時に愚かさにくじけ、時に喜びを噛み締め、少しでも気を抜けば相談者そっちのけで、わたしと水野さんが相談の谷底へ沈んでいったこともありました。

魂と魂のぶつかり稽古のような恋愛相談の記録、それが『LOVE相談』なのです。

■耳で聴く版

■目で読む版

恋愛の相談を通じて「人生を振り返り、これからどう生きたいのか」を、自分で決めるためのコンテンツです。

恋愛は、思い通りにいかないのが当たり前。だって、相手がいることだから。だけど、相手を思って、自分で決めたことならば、結果がどう転んだとしても、成長してゆけるのが人間です。

自分で決めてきた数だけ、わたしたちは、幸せになれます。

あなたは、どう生きてきたの?
そして、どう生きていきたいの?

あなたにとっていま一番大切なことを、ズタボロになりながらわたしたちが問いかけ続けます。笑って、泣いて、忙しいほどにも程がある恋愛のぶつかり稽古に、これからもお付き合いいただけたらと思います。

書籍の販売を記念してPodcast版「LOVE相談」の新作を配信中です。これからも新しく配信されますので、相談内容を募集しています。詳しくはほぼ日WEBからどうぞ。

LOVE相談で答えてきた質問

Q.車いすでも結婚できますか?

Q.同棲しましたが水道を流しっぱなしにするパートナーにモヤモヤします、どう伝えたらいい?

Q.2年ほど恋人ですが一度も相手から会いたいと言われたことがありません、好かれていないのでしょうか?

Q.付き合って4年になる彼氏とセックスレスです、どうしたら解決できる?

Q.毒親で育った人間は幸せな恋愛をすることは難しいのですか?

Q.今まで一度も恋愛をしたことがない劣等感、いつ失くなりますか?

 
コルク