【キナリ★マガジン更新】岸田家の読むゴハン(魔法の台所と五目そぼろ)

 
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とにかく楽しそうに料理をするのが、私の母だった。

ジュウジュウと油が弾ける音が聞こえてきたら、母の料理が始まった合図だ。
小学生の私は示し合わせたように鳴る腹をさすりながら、皿を取りに行くフリをして、台所に立つ母を覗く。

正確には、母の跳ねるように踊る手元を覗く。
フライパンの中身が好物だったら、伴奏するように小躍りしながら、私は食卓の準備をする。

美味いかどうかより、好物かどうかが重要だった。

「母の料理のすごさ」をようやく思い知ったのは、一人暮らしを始めてからだ。

まず、めちゃくちゃ美味い。これは子どもの頃気づかなくて、色んなものを食べる大人になってから気づいた。
パァッと鮮やかで華やかで、目から美味さが飛び込む。
さらに、栄養がこれでもかというほど考えられている。
処理が面倒だったり、高かったりする野菜が、惜しげもなく投入される。

驚異的だったのは。
母が料理を持って台所から現れてくる頃には、台所がピカピカに片づいているのだ。

あんなに手間かけて料理作ってるのに、どういうことやねん。

「料理はな。楽しくやるのと、片づけしながらやるのが肝やで」

母の口癖だった。

どうやら、我が家の台所は、魔法の台所だったらしい。


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