(下書き公開中)岸田と関わってくれる主催者/参加者のみなさんへ スキ

 

Photo by t_and_s_coach

はじめに
岸田奈美のWEBサイト「キナリ」に掲載しようと思っている説明文(エッセイではないです)の下書きを、一時的に公開しています。

障害のある人がイベントに参加してくださる機会が増えたのですが、主催者から「どんなサポートをしたらいいかわからない」と相談をもらうので、いつも長文メールを送るのもアレだし、ちょっとでも便利になればと思って書きました。

もっといい方法を知ってるなど、お気づきのことがあれば、4月11日(月)23:59までにコメントいただけましたらありがたいです!すべて反映したり、お返事したりはできないと思いますが、それはごめんなさい。

目次

  1. 岸田を呼んでくれる主催者のみなさんへ

  2. 岸田の話を聞いてくれる参加者のみなさんへ

  3. 1.会場を選ぶときの工夫

  4. 2.募集するときの工夫

  5. 3.耳が聞こえづらい人への工夫

  6. 4.目が見えづらい人の工夫

  7. 5.さいごに

岸田を呼んでくれる主催者のみなさんへ


いつもこんにちは、岸田奈美です。

インターネットの片隅で取るに足らない日記を書いていたわたしが、イベントや講演会でお話させてもらえる機会に恵まれ、はや2年が経ちました。はやっ。

早口で、思いついたことをポンポン話し続け、時間もきっちり守ったためしがありません。それでも、わたしの話を聞いてくださるみなさんには、感謝の気持ちでいっぱいです。

いっぱいついでに、主催者のみなさんにお願いがあります。

わたしの話を聞いてくださる人のなかには、わたしの母や弟のように障害や特性があり、参加に不安を感じる人がいます。不安を減らすための工夫を、ここで紹介させてください。

っていうか、ここに書いてることはほとんど、障害があるなしにかかわらず、やっておくとなんやかんやでみんな得することでもあります。(字幕とかね)

工夫には、手間やお金がかかるものもあります。どこへ出しても恥ずかしい岸田奈美を呼ぶだけでもそこそこのリスクを負われてる主催者のみなさんに、書いてることぜんぶやってくれ〜!とは言いません。

とはいえ、わたしは、おもしろい人に偶然出会い、おもしろい縁に繋がれ、おもしろい日々を書いて食っている作家です。

そういうわけで、わたしの!!!飯の種を!!!助けると!!!思って!!!ちょっとだけでもご協力をお願いできたらハッピ〜です。いい話、しますんで。


岸田の話を聞いてくれる参加者のみなさんへ

「参加したいけど、自分のせいで迷惑かけたらやだなあ、断られてもショックだなあ、何度も説明すんの地味にきついなあ……」とか、いろいろ考えると、いつもしんどいですよね。岸田家はしんどくて頻繁にふて寝するので、めちゃわかります。

ただ、主催者の人たちも、知識や経験がないがゆえにどうしたらええかわからんと盛大にパニクッてることもあるんですよね。

いま気持ちに余裕のある賢者は「自分はこんな工夫があると助かる」「これが無理なら代わりにこんな工夫をしてほしい」など、歩み寄り的な相談をしてもらえると、わたしはとてもハッピ〜です。

もし、希望する工夫が用意できなかったら、本当に申し訳ありません。けど、次回はこうしよう、とかちょっとでも準備できるようになるので、希望してもらえて嬉しいです。

この工夫は、わたしがよく出演する規模(現地参加者30人以下、予算に余裕がない個人店が主催)の運営を想定して、ガッツリ省略し、個人的な知見もガンガン加えて書いています。ここに書ききれないことの方が多くて、ごめんなさい。より丁寧で適切な対応は、公的なマニュアルを参考にしてください。
平成30年 三重県 UDイベントマニュアル.pdf
内閣府 障害のある人に対する情報保障のためのガイドライン

1.会場を選ぶときの工夫

会場参加者がいる場合は、できれば、こんな設備がある会場がおすすめです。

・広い多目的トイレがある(ないなら近くの駅や商業施設など、どこにあるかを調べてくれると助かる)
・段差にはエレベーターやスロープがある
・ほじょ犬を歓迎している(法律で受け入れが義務づけられていますが、たま〜にテンパった警備員さんから『い、犬がおるど〜!』と止められるので事前に言っておくと安心)

2.募集するときの工夫

どんな工夫が必要な人が参加するのか、事前にわかっていた方がいいです。必要な工夫だけ、準備することもできます。

申し込みフォームで取得してほしいこと(※=最優先)
※●備考欄(参加者が自由に記入できる。項目名が「サポートや情報保障が必要な方はご記入ください」とあればなおわかりやすくて良し)
●情報保障を希望するかどうか(耳が聞こえづらい人向け)
●情報保障を希望する場合、「手話通訳/PCテイク/字幕」のどれか
●前方の席を希望するかどうか(車いすや視力が低い人向け)


3.耳が聞こえづらい人への工夫

出演者が喋ってることを伝えるためのサポートを情報保障といいます。耳が聞こえづらい人には、手話で伝えるか、文字で伝えるか、のざっくり二通りあります。

本当は、手話も文字も、どっちもあった方がいいです。

聴覚に障害のある人のうち、手話を使える人は約2割といわれてます。逆に、手話に慣れている人のなかには、文字が超苦手な人もいます。文法が違うから、言葉を受け取るスピードもニュアンスも、全然違うんですよね。

というわけで、手話と文字、どっちの情報保障を必要とするかは、事前に参加者へ確認しておくことをおすすめします。

わたしとしては、情報保障の希望者がいなくても、録音&自動文字起こし&文字起こしログ保存まではやっといた方がいいと思います。


 手話通訳を用意する場合
なんもわからん場合は、まず、主催地の自治体に「手話通訳者の派遣を行っているか」「意思支援制度を用意しているか」をまるっと聞いちゃった方がいいです。

問い合わせ先もわからんかったら「障害者の情報・意思疎通支援(内閣府)」の最下部にむちゃくちゃ長い名前の窓口があるからそちらに。

その窓口で手話通訳者を派遣してくれるところ(都道府県ごとの聴覚障害者協会など)を紹介してもらうか、自分で派遣元を探しましょう。わたしの前職のサービスですが、ミライロ・コネクトはオンライン通訳も対応していて、WEBサイトに見積もりシミュレーターもあります。

PCテイク(PC要約筆記)を用意する場合
専門知識を持った要約筆記者が数名で、喋ってる内容をリアルタイムですべてPCでタイピングし、文字を画面に映します。

↑の手話通訳を用意する方法と同じ方法で、問い合わせしてください。


予算がない場合
手話通訳もPCテイクも、専門知識と経験のあるプロがやってくれるので安心ですが、費用が2時間で約1〜2万円かかります。費用を負担してくれる自治体もありますが……!

イベント業界が不況のいま、それだけの予算をどうしても用意できないことがあると思うので、耳が聞こえづらい人には不便ですが、いったんお金がなくてもできることも紹介しておきます。


予算がない場合(会場でリアルタイム情報保障)
UDトーク」という、iOS/Android音声認識アプリが、無料または安価で使えるのでおすすめです。営利イベントなら月980円か週480円を選べるコンパクトプランで。なんにせよ試すだけならすぐできて無料。

喋る人も、参加する人も、どっちもスマホにアプリを入れておくと、音声を自動で認識して、表示してくれます。

これだけでOKなんですが、たまに変な認識をしたり、喋る人が複数いるとうまく認識しなかったりするので、できれば主催スタッフでだれかひとり「修正する人」がいると親切です。スマホやPCで言葉の修正ができます。

そのへんも含めて、公式説明をご覧あれ〜。

予算がない場合(オンラインでリアルタイム情報保障)

遠隔にいても手元のスマホで見てもらうことはできますが、スマホとPCをどっちも見ないといけないので、わりと不便です。

Zoomで配信すると、UDトークを画面共有して映すことができます。

または

これ、赤ちゃんの寝かしつけとかでところどころ音声聞けない…でも内容気になる…っていう人にも喜ばれると思うんですよね。


予算がない場合(アーカイブで情報保障)

録画しておいて、あとで動画をアーカイブ配信するというやつ。最近増えましたね。

方法1.Youtubeに動画をアップロードして、自動字幕機能をつける
勝手にYoutubeが認識してくれるので、これがいちばん手間がかからないですが、まあトンチンカンな内容も多いです。「エース ガチンコ対決」はたぶん「エースがチンコ対決」と出ます。危険。

方法2.Youtubeに動画をアップロードして、自動字幕を手作業で修正する
間違ってるところだけ、自分で修正できます。修正作業に映像の時間×2倍くらいはかかるけれども。

方法3. UDトークのログを字幕エディターで編集して、字幕データをYoutubeにアップロードする
会場でUDトークを使っていた場合は、この方法が便利です!

方法4. 文字起こしした原稿を送る
そもそも字幕じゃないです。当日なにを喋ったかがちょっとわかる、くらいのおまけです。イベントの楽しみはド半減します。だけど、無いよりはあった方がいいので最後の手段。

UDトークやGoogleドキュメントなど、音声を自動で文字起こししたログを保存して送ります。ログそのままだとわけわからん内容なことが多いので、ざっと見て編集もしておくと親切です。

いっそ外注してでも人力で文字起こししたらわかりやすいし、そのデータを使って、イベントレポートも作ったら一石二鳥ですよん。


4.目が見えづらい人の工夫

・大切な情報は、画像の中だけではなく、文字で表示する。

目がみえづらい人は、スクリーンリーダー機能(WEBサイトやSNSの文章をパソコンが読み上げてくれる)を使っていることがあります。

これはポスターや写真など“画像”の中に書かれた文章は読み上げないので、日時、料金、会場、申し込み方法など、大切な情報は文章でも記載しときましょう。

Twitterだと、画像に代替テキストをつけて、スクリーンリーダーに対応する機能があります。


5.さいごに

長々といろいろ書きましたが、主催者も参加者も、人によって事情も違えば、できること/やってほしいことも違います。

もしかしたら、ここまでしっかり準備しなくても、ほんのちょっとしたことで参加できる人もいるかもしれません。

わたしの母は車いすに乗っていますが、体重も車いすも軽いので、3人ほどに手伝ってもらえたら、階段を移動できます。階段は無理だけど、2段くらいなら自分で歩けるという人もいます。

みなさんメチャお忙しいなか、大変だとは重々わかっているのですが、どんなサポートがあれば参加できるか、ちょっと相談するところからやってもらえたら嬉しいです。

もろもろの事情でなんもできひん、という主催者さんは、一度わたしにご相談ください。

「岸田が話すイベントに行ったけど、こんな対応があって良かった!」「岸田を呼んだけど、めっちゃ楽しかった!」

とか、いつかSNSで言ってもらえたらいいな〜と、ぼんやり思ってます。わたしの株が上がりますように。これからもよろしくお願いします。

 
コルク