【キナリ★マガジン更新】解体工事から逃げられない

 
Photo by inagakijunya

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もうすっかり暖かくなって……を通り越して、暑くなって。

いや暑いよね? おかしくない?

ついこないだまで寒くなかった?いつ春がくるのかなって待ち構えてたけど?早すぎでは?しばらく会っとらん親戚の子の成長より早すぎでは?

おっかしいなあ、去年もこんなもんだっけか、と一年前のnoteをさかのぼったら、家に飛び込んできたスズメバチにルンバで元気に応戦していました。オッケイ今年のわたしも元気でよかった!

そういやルンバの中に入ったままのスズメバチ、取り出した記憶がないんだよな。ゴミは3ヶ月に1回くらい捨ててるんだけど(こまめのこの字もない)スズメバチらしきもんを見たことがない。気にせんとこ。

でもまさか、ね。

一年であの家を出るとは思わなかった。東京から京都だもん。もはや遷都なんよ、逆遷都。

引っ越しの理由・一番打者はやっぱり「家族のもうあかんわ状態」なんですけど。退院したてで子鹿みたいな足腰になっとる母や、華麗にボケ散らかしてるばあちゃんの様子をすぐ見に行けるように。

ちょっとここで、二番打者も紹介しておこっかなって。

一番打者の影に隠れがちだけど、もう、二番打者も助っ人外国人並みの打撃力があんのよ。

騒音がうるさい。(Ex.頭痛が痛い)


家の窓あけたらすぐ隣、目と鼻の先が、なんか区の庁舎だったんだけど。

2月くらいだったかな。ある日突然、なんの前触れもなくそれが粉々にぶっ壊された。

ズガガガーン!ガガ!ガガガーン!ドガガガガガ!


みたいな炸裂音が、朝の9時くらいから響き渡りまして。朝の9時っつったら、わたし、まだ寝てるんですけど。

「なに!? 爆撃!?」

って思いながら窓を開けたら、庁舎になんか巨大ドリルみたいなのが突き刺さってた。これでもかというほど突き刺さってた。グレンラガンかな。

寝ぼけ眼で玄関出てエレベーター降りて、十歩くらい歩いて、なんか柵に貼ってる紙見たらさ。

「老朽化に伴う解体・新築工事」って書いてあんの。天元突破じゃなかった。

まあ仕方ないよズガガガガガガーン区民の暮らしがよりオラーイ!オラーイ!良くなるためのものだし、老朽化ならギャギャギャいずれは解体しなバキッバキバキバキッいといけないから、わたしガガガーン!ガンッ!だけわがままアーソッチソッチ!なんて言ってられな……

うるっっっっっせええなあ!!!!!!


窓閉めててもなんの意味もねえ!オンライン会議しててもまったく聞き取ってもらえないし、相手の声も聞こえないし、なんなら自分の声すらなに言ってんのかわっかんねえ!ミュート!わたしの企画進行のための会議なのに、わたしだけミュート!全員が困惑しながら「こんな感じでいいんだっけか?」的に進めてる!ごめん!

解体工事ってなんかもっと、防音の壁みたいなさ、あの、なんか戦国時代の合戦で大将が居座るみたいな幕とかで覆ったりしないのか。もうほぼ丸裸なんだが。窓開けたら、普通に工事のおじさんの首元からのぞくインナーの色すら視認できるんだが。

しかしおじさんたちはただ、まっとうに仕事をしているだけなのである。文句を言ってはならない。

しばらく我慢するかと思って耐えてたけど、一向に終わる気配がない。

一日がズガガーン!で叩き起こされて始まり、昼休憩の一時間だけおさまったかと思えば、十七時くらいまでまたギャギャギャーン!

おかしなるわ。


なんだかんだで二ヶ月が経って、もうそろそろ終わるやろ、と祈るような気持ちで窓を開けたら。

なんか、でっけえ地下室、掘ってた。

でっけえでっけえ地下室だった。

いま地下室作ってたらこれいつ終わるねんと思いながら、改めて張り紙を見に行くと。

「工事終了は8月末を予定しています」


あかん、引っ越そ。


東京に自宅を残すかずっと迷っていたが、気持ちが固まった瞬間であった。


しかし、この時のわたしはまだ、自分が解体工事から逃げられない運命だと知らなかった。

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