【キナリ★マガジン更新】よおく考えるまでもなくお金は大事だよお(漏水ビチョビチョ日記)

 

住む家が決まったら、息つく間もなく、引っ越しだ!

果たして、新年が明けるまでに越せるのか!?

▼ これまでに書いた経緯
1日目|天井から今も雨が降り続いている人間の記録
2日目|32歳にもなって土下座で大号泣
3日目|止んでる間に詰めろ詰めろ
4日目|君たちはどう濡れるか
5日目|水道ミステリー、解明編
6日目|給湯器はなぜ年末に壊れるのか?
7日目|アドバイスに溺れるがお湯は出ない
8日目|壊れものたちの鎮魂歌
9日目|生活する人、仕事する人
10日目|お導きマンション

目次

  1. 12月29日 11:30- 待ちに待った引っ越し

  2. 12月29日 12:30- 必殺仕分け人

  3. 12月29日 14:00- 捨てる神あれば

  4. 12月29日15:00- うなれ!与信枠!

  5. 12月29日17:00- 火災保険

  6. 12月29日18:00- 神もヘソで茶をわかす

  7. 12月30日9:00- ほけんの窓口

  8. 12月30日9:30- 火災保険を学ぼう

  9. 12月30日10:00- 強い気持ち・強い愛

  10. 次回、最終回!


12月29日 11:30- 待ちに待った引っ越し

引越会社で眠っていた段ボールの群れたちと、感動の再会。

マインクラフトのCGみてえだ。

汚水に追われて、とにかく詰めまくったので、中身はわけわからん。写真の三倍ぐらいあるし。

引っ越し屋のタイ人のお兄さんがやってくれたであろう、

クシの箱。

開けたら、ギッチギチの靴(クツ)だった。


弟が荷ほどきを手伝いにきてくれることになった。

戦力にならんやろと思っていたが、

「やるときはやるから!やるときはやるから!」

母のゴリ押しにより、単騎で送り込まれてきた弟。

頼むから、ジャマせんとってくれるなよ。

ベコッ。

「おや……?」

ペコッ。

パタン。

黙々と、空いた段ボールをたたんで、まとめている。

早い。早いぞ。

業者のごとしスピードにおどろいていたら、福祉作業所でどうやら似たような作業をしていたらしい。業者やないか。

い、いつの間にそんな……立派になって……!

12月29日 12:30- 必殺仕分け人

甘かった。

弟は何事も、キッチリ終えなければ、落ち着かないたちなのを忘れていた。

わたしは何事もダラダラ引き伸ばすたちなので、段ボールの中から出てきたものを、てきぱき仕分けられない。

「あー、それはそのへん置いといて!あとでやるから!」

捨てるかどうかの判断が面倒くさいったらありゃしなくて、どんどん保留にした。

弟は、フム、と段ボールの中身を見て、

「これは、いるわ」

取り出しはじめた。

使いかけのウェットティッシュ、クリーニング屋のハンガー、乾いたスティックのり、メガタゾ。

「これは、いるわ」

どういう基準かはわからない。弟がいるったら、いるのである。

それらを空っぽのクローゼットの端から、几帳面に並べていく。

またたく間に建立される、がらくたのジェンガ。

ペコッ。パタン。

空になった段ボールをたたんで、すっきりした顔で、また次の段ボールに手を伸ばす。

あ、あかん。

わたしが判断を保留にすると、容赦なく詰められてしまう……!クローゼットがお陀仏になる……!

12月29日 14:00- 捨てる神あれば

弟の爆速荷解きから猛烈に追い上げられ、捨てる、捨てないをシュバババ!ッと判断した。がんばった。パンパンのゴミ袋、いっぱいできた。

普通はこれ、引越し前にやることだよね。

「じゃあ、これ、捨ててくるから……」

弟がそっとゴミ袋を開いていた。

「これは、いるわ」

捨てるはずのイヤフォンを、こっそりポケットに入れていた。

お駄賃、それでええか?






12月29日15:00- うなれ!与信枠!

荷解きに飽きたので、電気屋に行った。電気屋大好き。

いますぐ使う家電を買っておこう。明日からしばらく閉まっちゃうし。

そう。

冷蔵庫は死んだ、もういない!

あいつったら野菜室が汚水をためこんでた。学校のプール掃除を思い出した。

なにはともあれ食事は大切なので、おニューの冷蔵庫を見てみたものの。

た……

たっけー!

たっけー!

ちょっと見ないうちにお値段、あがってる。円安と資材高騰、モロにくらってる。

なにこれ、みんなこんな、たっけーの買ってるの?生活必需品にこんな払ってるの?もう氷室(ひむろ)でいいよ!氷室つくらせてよ!

冷蔵庫とエアコンだけは、ないとお話にならない。忘れてたけど、電子レンジも死んだ、もういない。

引っ越しの初期費用で、すでにドえらい金額、払ってるのに……。

落ち着け。
大丈夫だ。
保険会社から補償が下りるはず。

「お会計、35万円になります」

「あっ、じゃカードで……」

うおおおおおおおおおお!

手が!手が動かない!
ボタン、押せない!

店員さんが「どうされましたか」と「お気を確かに」の、ちょうど中間の表情で突っ立っている。

補償、下りるよね?
これほんとうに、下りるよね?
審査に1ヶ月かかるらしいけど、下りるよね?

ピッ、ピッ、ピッ、ピッ!

ふるえる指で暗証番号を押す。決済音とともに、脳がジュワ~ッと変な汁を出して、溶けはじめる。

来月のわたしが払えるかどうかわからない金を、払う。

やばい!むちゃくちゃ怖い!

理屈では補償についてわかっているのに、人間としての何か大切な器官が、軋んでいく。その大金はやばいよやばいよと細胞が叫んでいる。

電話がかかってきた。

京都でボルちゃんを置いていた、駐車場の管理人からだ。

「このたびはご愁傷さまですう。お約束よりも早い解約ですので、違約金が6万円かかりますう」

ジュ……ジュワ~ッ。






12月29日17:00- 火災保険

住宅の事故にくわしいフォロワーさんから、

「一応、個人で加入している火災保険会社にも、早いうちに連絡しておいたほうがいいですよ。マンション側の保険で足りない場合、補えることがあるので」

と、教わったのを思い出した。

やれることは、やっておこう。

なんせ、保険料も2年で2万5000円払ってるし。

電話した。

結論から言うと、塩対応だった。カリッカリの塩対応だった。


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